翌日、俺は真ちゃんにトイレといってとある教室の前まで来ていた。


中谷先生の受け持ちクラス。
ここに来れば昨日の女の子に出会えるはずだ。

真ちゃんに##NAME1##ちゃんのことを話したけど興味ないと一括され
挙句女々しいとまで言われたので真ちゃんの前で名前ちゃんの話題はやめようと決めたのだ。

と言うか例え真ちゃんがのったとしても、男2人で女の子に会いに来るなんて気持ち悪い。


思い立ったらすぐ行動がモットーだから早速ざっと教室を見渡す。
こういうとき自分の視野の広さというのは役立つ。

おかげですぐに教室の窓際後ろから2つ目に座る彼女を見つけることが出来た。
今は昼休みで皆友達をわいわい騒いでいるというのに彼女は一人で黙々と弁当を食べている。


俺は彼女にそっと近づく。


「……苗字さん、だよな?」

「!」


驚いた目で俺を見る。
あぁ、やっぱり気のせいなんかじゃない。
彼女が俺を見ているだけなのにそれだけで顔がにやけてくる。


「…昨日の。」

「覚えててくれたんだなっ。
昨日ぶつかったところ本当に平気かなって心配でさ。」


うそ、本当は君に会いに来ました。


「あぁ…大丈夫です。ご心配ありがとうございます。」

「あ、俺高尾和成。同じ1年生。だから敬語とか使わなくていいから!」


…いきなり教室に入ってきて昨日の事を心配されたと思ったら今度はいきなり自己紹介。
しかも先輩だと思ったら同学年だったとは……。


「はぁ…。」

「苗字さんは?名前教えてよ!」

何か軽そうな人。…ってか周りからの視線が痛い。
そりゃそうか。クラスで独りぼっちで浮いてる私にこんなかっこいい人が声かけてるんだし。

「…苗字名前。」

「名前ちゃんか。」


ガタ…


「…どうした?」

「話があるなら廊下で聞きます。ここじゃ周りの視線がウザくて…。」


名前ちゃん観察メモ(今命名)
@名前ちゃんは意外と口が悪い。






「…んー、ぶっちゃけ用事はないんだよね。」

「は?…じゃあ戻ります。」

「あー待って待って!!話ちゃんとあるある!」


何なんだ、この男は。ただでさえこの後教室に戻って授業受けるのが苦痛なのに……。


「…何ですか?」

「あのさ、バスケ部の練習見学に来る気ない?」

「……はい?」

もうこの人にはついていけないというか……自分勝手な人なのか?


「あ、いや…マネージャー絶賛募集中でさ。
昨日会ったばっかでこんな事言うのもアレだけど…マネージャーとか興味ないかなって。」

「興味ないです。」


ズバッといって教室に戻ろうとしたら手を引かれた。


「待って!見た限り名前ちゃんってバスケに詳しいよね!?」

「!?」


彼…高尾君、と言ったか。何者なんだ。
確かに私はバスケに関しては詳しい……昔の話だけど。

でもそのことを知っている人はこの学校に誰もいない。
それにバスケ部の練習を見たのだって昨日が初めてだ。


なのに……どうして。



「無意識に口が動いてたし。…さすがに何言ってるかはわかんなかったけど、
ミスしたり変なところがあったときだけ口が動いてたからもしかしたらって思ってさ。」


どんだけ視野が広いんですか高尾君。

「…視野、広いんですね。」

「一応ね。…で、どうかな?」

「お断りします。」


「何で?先生に聞いたら帰宅部だって言ってたし……
確かにうちの学校のバスケ部は忙しいけど「私、バスケがこの世で一番嫌いなスポーツなんです。」



はっきり、面と向かって高尾君にそう言うと彼は少しだけ寂しそうな顔をして……


「でも、バスケが心から嫌いな奴はあんな風に練習中のミスに口モゴモゴしないぜ。
……俺、諦めないからな!」


それだけ言うと自分の教室へと走って言ってしまった。


「…悪いことしちゃったよね。」

バスケに全てを捧げるためにこの学校に入学してきたのにマネになってほしいと言った子にはっきりと
バスケ嫌い
と言われたのだから。


……でも、だからと言って彼の言葉に従ってバスケをするつもりはない。


バスケは昔から私の大事なものしか奪っていかないから。




あの日以来、私はもう二度とバスケに関わらないって決めたんだ。




結局私もすぐに教室に戻り、その後の授業中にクラスの人たちに噂されたのは言うまでも無い。

でも特に誰かが何かを聞いてくるわけでもなく……



そのままいつも通り授業を終え家に帰った。



そして夜、

昨日見た悪夢をまた今夜も見るんだろうと思いながら眠りについた……。





バスケがこの世で一番嫌いなの。

(それは俺がこの世で最も聞きたくない言葉第一位)
.





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