キーンコーンカーンコーン……


「部活行くぞー!!」

「早く帰りてー。」

「あー、今日バイトだー。」


本日最後の授業が終わると教室からはそんな声がたくさん飛び交う。
私はというとそんな嬉しそうな皆をよそに一人窓の外を眺めている。


……この教室に私の居場所はない。

この学校にも……どこにも。


「…苗字さん。」

「…何?」

「数学の宿題…私か数学係だから集めたいんだけど良いでしょうか?」


どうしてクラスメイトに対して敬語を使うのだろう?
私は別に睨んでるつもりはなくても目つきが悪いらしい。(自覚はないけど)

「はい。」

そういって渡すとクラスメイト…確か佐藤さんだったはず。
友達の元へ行き"怖かった−"なんて言っている。
私は何もしていないのに勝手に怖がられていい迷惑だ。



「おーいお前らHRやるから席に着けー。」

そんな担任の言葉に皆一斉に席につく。


……早く帰りたい。



「………だ。じゃあ日直挨拶しろー。」



あぁ、やっと帰れる。


挨拶が終わり皆ガタガタと机を下げる。


「あ、苗字。」

「はい。」

「お前帰宅部で暇だよな?ちょっと手伝ってくれるか?」


…ふざけんなこの担任。
案で私が帰宅部=暇人なんだよ。
お前の目の前にいる田中に頼めよ。
今日暇って言ってたから。


……なんて言えるわけもなく。

「分かりました。」







*

「じゃあよろしくな。」

私に頼みたかったというのはどうやら明日のLHRで使う資料のホチキス止め。
先生はバスケ部の顧問もやっているから色々と忙しいみたいだ。

って言うか忙しいなら顧問やるなよって話。
青春ごっこでホチキス止めを生徒に押し付けるなよって話よね。


あいにくとこのクラスに友達と言える子もいないので助っ人もいない。


「はぁ…やるか。」


パチッ パチッ……



「っし…これで終わり。
ったく、…先生一回様子見に来るとか言って来ないし。」

本当いい加減だよな、あの担任。
ホチキス止めた後どうするか指示してから部活行けよ。
このまま放置していっても何にも問題はないと思うけどもし誰かに悪戯でもされたら私の苦労が水の泡だ。

じゃあ職員室に行って先生の机においておいて貰うか……いや、それはやめておこう。
この前それをやって先生は田中君の提出物をなくしたのだから。


「バスケ部の顧問なら体育館にいるか。」

ったく、こんなときにちゃんとしないときがすまない自分の性格が嫌になる。







*

ダムダム……


ボールを突く音がする。確かうちの学校のバスケ部は強いとか何とかクラスの人たちが騒いでいたな。

私には何にも関係ないけど。


「えーっと、先生は何処にいるかなー。」


チラッと体育館を見るとたくさんの生徒が練習している。
さすが強豪校なだけあって人が多い。
おかげで身長が小さい私には先生が何処にいるか分からない。


「あーもー、あの緑の頭邪魔だな。
こうなったら誰かに呼んでもらう…「あ、危ないよ!」


なんて言葉に前を見るとバスケットボール。
運動神経がそこまでよくない私によけるなんて出来るわけもなくそのままぶつかってしまう。


「…っつー。」

「わりぃ!大丈夫か!?」

駆けつけた男子は頭を抑える私に近寄ってくる。
顔は見えないけど背は高い。

「…大丈夫、です。」

「ちょっと手どかしてみ。」

そういって私の手をどかす男子。大丈夫って言ってるのに…。


「……ぁ。」

「……何ですか。」

身長高いな、先輩かな?
何か驚いた顔してるけど……まさか血が出てるとか?


「…いや、平気みたいだな。
ってか、こんなところでボーっとしてたら危ないから次から気をつけろよ?
……あ、もしかして誰かに会いに来たとかッスか?」

もうめんどくさいから彼に頼んじゃおう。

「中谷先生を呼んでいただけますか?
1年の苗字と言えば分かると思います。」

「おっけ。」


そして私は先生に資料を渡してさっさと帰宅する。




帰り道も家についてからもなぜか今日であったバスケ部の男子の事が頭から離れなかった。


「バスケ…か。」



私がこの世でもっとも嫌いとするスポーツ。



「今日は嫌な夢見るな、絶対。」




そうつぶやきながら私は眠りについた。








*

高尾side

やっと学校と部活の練習に慣れてきた今日この頃。
俺たちはいつもどおり練習をしていた。

すると俺の視界の端に突然体育館をのぞいている女の子が目に入る。


なにやら誰かを探しているようで…。



「高尾!」

「っ…ぁ。」


練習中に余所見をするなんて最悪だ。
とり損ねたボールはそのまま体育館の外へと転がっていく。


あの女の子がいるところだ。

でも当人は人探しに夢中なのかボールが着ていることに全く気付いていない。


気付いたら俺は叫んでいた。


「わりぃ、大丈夫か!?」


頭を抑えている女の子。見たところ一年生っぽい感じ。

一応怪我していたら大変なので急いで手をどかす




瞬間、俺はその子から目を離せなくなった。



俺は絶対一目ぼれなんてしない



そう思っていたのに、人生とは何が起きるか分からないものだ。




してしまった、一目ぼれ。






ボーっとしてる逆に向こうに心配された。

でも今俺の頭の中はそれ何処じゃない。
名前はなんていうのか、学年は、クラスは……


彼女の事をもっと知りたい。

でも一応誰かの彼女とかだったらショックなので誰かに用でもあるのか聞いたら


「中谷先生を読んでいただけますか?
1年の苗字と言えば分かると思います。」



俺は運のいい男なのかもしれない。
真ちゃん風に言うのなら"人事を尽くしているから"ってやつか?


苗字さん……それが彼女の苗字。

じゃあ名前はなんていうのか、同じ学年で担任が顧問ってことは会おうと思えば会えるわけだ。






結局あの後先生を呼んでそれで終わってしまったがその後の練習に身が入らなかったのは言うまでも無い。


でも一瞬でも気を抜けばここではすぐにレギュラーからはずされる。

とりあえず、彼女の事はまた明日考えるとしよう。








運命の出会い

(一目ぼれなんてありえない)

(そんな昨日までの自分にさようなら)





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -