六日目



「…んー、頭いたい。」

って言うかここ何処だ?確か久々にあっちのチカラを使って倒れて……。
それにしても、治療してすぐ倒れるとは…。

「もう限界、かな。」


「目、覚めたのか。」
「ナルト!何で私ここにいるの?」

「病院いくのは避けたほうがいいと思って俺の家に運んだ。調べられれば言い訳しづらいからな。」

「そっか。…って、今何時?」
「そろそろ夜になるな。
あ、一応綱手に見てもらったから。特に異常なしだけどチカラは使わないことだと。」

火影が診てくれたのか…。

「ありがとうございます。…ナルトや皆さんにも迷惑掛けて…。」

「サクラ以外は皆めんどくさくなかったから気にすんな。」
「サクラさん…?」

「あのあとさ……。









「姫っ、どうした!?」


「ナルト!私に診せて!」

…ここでサクラに治療されたら色々厄介だな。
姫が俺の予測どおりチカラを使うと倒れるならなおさら…。
そもそも、こいつは表に出て良い人間じゃない。病院は避けるべき、か。



「シカマル、」

「分かってるよ、めんどくせー。(ボソッ)

姫は大丈夫だ、心配すんな。」

「何でシカマルがそんなこと言えんのよ!」
「そうだよ!医療忍術はからっきしじゃないか!」

「あー、そういえば姫ってば昨日、今日皆を会えると思ったら一睡も出来なかったと言ってたってばよ!
そんな状態であの犬治せば倒れるってば。」

「そもそも、何で瀕死状態だった犬がいきなり元気になったのよ!」

「俺が知るかよ。…とにかく!姫を送り届けて来るってばよ。」

「ちょっ、ナルトー!?」





って感じだ。」

意外と良い言い訳だな。…滅茶苦茶だけど。

「まぁ、私はこうしてなんともないわけだから…「あのチカラ、使うと姫に何かしら影響をもたらすものだろ。」


くそぅ、やっぱ総隊長の目はごまかせないか。これがシカマルだったらもっと厄介だったのかなー?
とりあえず、ここは何としても誤魔化さないと!


「本当に疲れてただけだって!あのチカラを久々に使ったから余計きつかっただけ。」

「前にオオカミに襲われた俺を治療したあと、同じ箇所を怪我したよな?
ただの偶然かと思ってたけど…今回は前回よりひどい怪我をして倒れた。」

「ただの偶然だって!それに、このチカラは特殊でしょ?私自身よく分かってないの。
でも、ナルトが心配するなら極力使わないからさ。」

「俺は心配とかで言ってるんじゃなくて……っ。」


昔の俺なら絶対こんな風には言わなかった。
ただの成り行きで1週間一緒に居ることになった奴が倒れてもどうでもいいはずなのに……。


「それにしても驚いたなー。まさかナルトにあんなにたくさん友達が居たなんてさ!
それに、キャラ作りすぎじゃない?」

「うるせぇよ。あんなの表の顔に決まってるだろ。表の姿じゃ下忍でバカでアホな設定なんだ。」
「何それ?私の作ってる設定よりひどいじゃん。
あ、そういえばさ。ナルトって一人暮らししてるけどご両親は?
よくよく考えたら心配してるんじゃ…「俺が生まれたと同時に死んだ。」


……あ、そうか。何でそんな簡単なことが想像できなかったんだろう。

「無神経なこと聞いた。…でも、答えてくれてありがと。」
「別に。気にしてねぇし。」


…一瞬、あせった。
そうだ、姫は16年前の九尾の事件を知らない。

つまり、俺の中に九尾の化け物が居ることも知らない。

俺は………怖いのか?
姫に俺の中の化け物の存在を知られるのが。


「…ナルト?顔色悪いけど大丈夫?
やっぱり聞かれたくなかったんじゃ…「大丈夫。」

今本当のことを話したら姫は俺を畏れるだろうか。
いや、暗部として生きているからそれはない…はず。
でも、もし軽蔑されたら?嫌われたら?


「……姫。」
「なぁに?」


「俺、お前に話しておくことがある。」



1週間が終わればお互い元通りの生活に戻る。なら、話す必要はない。

けど……姫には知ってもらいたかった。



「俺の腹の中には16年前木の葉を襲った九尾が居る。」


「……九尾って…4代目が封印したって言われてる、あの?」
「その4代目は俺の父親。そして、生まれてすぐの俺に九尾を封印したんだ。
気づいただろ?シカマルたちと会うために向かう広場に行く途中の周りの奴らの視線。」


確かに。ナルトが総隊長だと知っていたからそういう態度なのかと思っていたけれど…。

そういうことだったのか。



"近寄って欲しくない、来るな、消えろ、何でお前がここに居る……。"

そんな、聞きたくもないような感情を含んだ目をしていた。


……けど。





「…へぇー、そうなんだ。」

「……は?」


そ、それだけ?


「私その話よく知らないんだよね。そもそも、何でそんなに悪者扱い受けなきゃいけないの?
九尾が体内に居るってそんなに畏れられること?
ナルトの中の九尾が一度でも木の葉の里を襲おうとした?大事なものを壊そうとした?
私には、そんな理由でナルトにあんな視線向けてる奴らのが畏ろしいけどね。」

なんて、ナルトのこと良く知りもしないで簡単にっていいのかな、こんなこと。
思わず出たとはいえ、"お前に何が分かる!"って感じだよね、正直。



「……ははっ。」


あぁ、綱手の言っていたことが今分かった気がする。
確かに姫はそこらへんの奴とは全然違う。

俺のことをよく知らないにしても…こんな事言うか、普通。

良い効果をもたらす……悔しいけど認めざるを得ない、な。


「お前、やっぱバカだな。
……さんきゅー。そう言ってくれて。」

シカマルや今居る奴らも決して俺を軽蔑したり避けたり嫌ったりしなかった。
けど、誰も俺の中の九尾に触れようとしなかったのも事実だ。
きっと、ここの炉どこかでその話をされるのを畏れていたのだろう…。


「ん!よく分かんないけどこっちこそありがとね。
話してくれてすごく嬉しかった。……だから、ちょっと外の空気吸いに行ってくる。」


俺はどこまで姫に気を使わせるんだか。
俺が泣きそうなのを分かって……。実際、泣きはしない。

ただ、一人でちょっと考え事をしたい気持ちなのは確かだ。


「さんきゅー……ほんと。」











*

「ナルトにだけは話しとくべきかな。」

私だけの秘密……。
ナルトが自分の過去を私に話してくれたから話そうって気になったわけじゃないけど……。


「って、何アホな事考えてんだか。ナルトが優しいからって甘えすぎ。
これは自分ひとりで何とかするって決めたじゃん。」



サァァアアア……



「そんな事よりも出てきたらどうなの?」


『察しが良いネ。さすが暗部。
……ナルトのためにお礼ついて来い。』

「ナルトのため?訳分からないわね。」

そう言えば私がついていくとでも思ってんのかしら。

『お前がナルトに幸せを与えてやれる唯一の人間。
これ以上はついてきてくれるなら説明するヨ。』

「残念だけどお断り。私は誰かのために危険な真似できるほど『良いから来いっ!!』



キィィイン……!!



こいつ……速いっ!


「…はっ、……まだ完全に回復してないのに……っ。」

『フフフ……。』


まさか…このときを狙っていたのか?
だとしたら……っ、


「しまっ…!!」


「お休みなさい、オヒメサマ。」


トンッ…


ドサッ…


ナルト……ごめん。




――…助けて。









「姫?」

今、あいつの声がした気がしたけど…。


それに、この感じ……っ、まさか!!


「姫の事考えてて異変に気づけないなんて……最悪だろ、俺。」

姫の気配がどんどん遠ざかっていく。
おそらく誘拐されたと見ていいだろう。


「姫を誘拐するとは…俺に喧嘩売ってんのか?」


とにかく、急いで追いかけねぇと!!


「ナルトッ!」
「シカマル…早いな。」

「姫の気配が遠ざかっていくから気になってな。」
「話は行きながら話す。とにかく今は姫を追う。」
「あぁ。」


あのナルトが人のためにここまで必死になるなんてな。
五代目との約束がそうさせてんのか、それとも……


いや、とにかく今は無事に姫を取り戻す事が最優先。
仮にお暗部なんだから簡単にやられたりはしないだろう。


ったく、本当……

「めんどくせー女に惚れたな、俺も。」

「なんか言ったか?」

「何も。…急ぐぜ!!」

「あぁ。」





待ってろよ、姫!!!










.


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