二日目
「狐さん、今回の任務ってどういうものなんですか?」
こんにちは!ただいま絶賛記憶操作中、姫です!
半径1キロ圏内は私たちの姿は認識されません!
でもコレ使うとチャクラの減り半端ないんだよね。
…ヘボな中忍の振りしているときは!!暗部のときなら全然平気なんだけどね。
「木の葉の機密情報を知ったある人物の抹殺。お前は記憶操作の為に来たんだろ?余計なことは聞くな。」
ワォ、失礼な奴だなー。
「何それ、着いてきてやったのにずいぶんな態度ね。」
「誰も頼んでないけどな。暗部の任務に中忍ごときが首を突っ込むなといただけだ。」
「ちょっと自分が立場上だからって…。狐さんって案外ガキなんだね。」
…何で俺が年もそう変わらない中忍に"ガキ"扱いされなきゃ何ねーんだ。
お前のせいで予定より1時間も押してるんだ……
って、よくよく考えれば暗部の俺のスピードに1時間遅れだと?
ただの中忍にしては速すぎる気が…。
「お前…暗部の俺のスピードについてこれてるのか。…記憶操作を使いながら。」
やっば、…つい総隊長のペースについてこうと暗部モードが入っちゃった。
このままじゃバレルよなー。……ここは適当に。
「私足の速さだけがとりえなんです。…多分このチカラを持つ人は足が速いのかな?
同期の中忍の中でも群を抜いて速いんですよ、私。」
「あぁ、なるほどな。速さ以外はからっきしって事か。」
……つか、何で俺もさっきからムキになって相手してんだか。
「狐さんって…「そろそろ目的地に着く。いくら記憶操作で認識されてないとは言えSSSランク任務をなめるな。」
な、何よ。急にマジな顔し出しちゃって…。私だってそれくらい分かってるんだから!!
「わ、分かってますよ!」
―――……ザシュッ。
「終わったぞ。」
「…ずいぶんと速いですね。さすが暗部。」
「…もう夜も遅い。いくら足に自信があるとはいえ休まなきゃ里まで記憶操作しながらはもたない。ここで野宿する。」
何でそういうところは無駄にやさしいのかなー。
…暗部だったら奪取で帰らすんだろう。
別に疲れてないし、このまま早く帰って休みたいけどヘボな中忍だから仕方ない、か。
それにしても暗殺の瞬間とか早すぎて全く見えなかったなー。
しかも、私に死角になるような角度で暗殺ってるし。
何でそういう変なところに気を回すかなー。
…やっぱ大人しく外で待っててあげるべきだったかな?
ま、なんにしても……さすが暗部総隊長ってところね。
「分かりました。あ、あっちに湖があったよね。
私水浴びしてくるんで覗かないでくださいね。」
「誰がお前みたいな奴を覗くかよ。」
……過去の私よ、何で総隊長と仲良くなろうなんて思ったんだ?
*
ポシャン……
「あーぁ、私もあれくらい楽に"グルルルル…"はいはい、グルルルル……って、はい?」
……何、今の獣のうめき声――ー"キシャーー!!!"
うそーん!?何でこんなところにオオカミが30匹近くもいるのー?!
「ははは……ほーぅら、森へお帰……るわけないよねーーー!!」
とにかく、裸のままじゃ何にも出来ないから服をとりに――…って、何でタイミング良く四方取り囲んじゃうのかな!?
バシャバシャ…
"グルルルルル…"
しかもよく見れば誰かに操られてる?ってことは近くに操ってる奴がいるはず……"ガバッ!"
「――…っ、」
こうなれば、多少の怪我は……"ドカッ" "キャゥンッ"
「……は?」
狐……さん?
「何やってんだ!オオカミ相手にボーっとすん……!!」
「狐さん?……っ、うしろっ!」
"ガブッ"
「っ、この…。」
こうなったら、中忍だけど使えちゃう設定でごまかしちゃうよ!!
「水遁、水龍!!!」
ゴァアァアア……
きっとこのオオカミたちは気絶すれば元に戻るはず…。
多少荒療治な気もしなくないけど……ま、今回の場合は仕方ないわね。
「…ふぅ。」
「…お前、水遁を使えるのか?」
「へ!?あ、あぁうん。私の尊敬する人が水遁使いでね。
私にも素質があるってんで教えてくれたんだ。」
記憶操作に水遁……さすがにコレで中忍ってのは通しづらい…わけないか。
総隊長なんか未だに下忍なんだし。強くても上忍になれない奴なんてのはざらにいるし。
「って言うかそんなことよりも、血!」
「あ?…こんなもんすぐに「あのオオカミたちは操られてて普通じゃなかった!ってか、こんなときの為に私がいるんだから。」
それより気になるのは……総隊長がさっきからどうも様子がおかしい。
…まさか、オオカミたちに噛まれた時に毒でも盛られたとか…?
「……お前さ、俺の治療よりも先に服…。」
「…あ、」
忘れてた。…もしかして、それ気にしてたとか?総隊長って本当よくわかんないなー。
冷たいと思えばこうやって気遣ってくれるし…。
ただ単に不器用人間なだけなのかな?
「でも今は無理かな。治療はすぐに終わるから。」
『チュウウウ…』
「……何してんだ「ふぉふぇふぁふぁふぁふぃのふぃふぉうふふぁいふふぁふぉ!(これが私の治療スタイルなの!)」
「何言ってるかわかんねぇよ。」
私の治療スタイル。蚊みたいに相手の怪我をした部位に吸い付き、私の唾液を擦り付けることで怪我が完治する。
正直、私だってこんなやり方嫌だけど、文句を言ってもコレしかないのだから仕方ない。
「…ま、コレくらいで平気でしょ。」
って、いつもよりも相当早いけどね。総隊長が怪我の治りが異常に早いってのは聞いてたけど……まさか、ここまで早いとはね。
"フワッ"
「……?」
「早く服着ろって言ってんだろ。お前に風邪引かれたら綱手に怒られるのは俺なんだ。」
「でも、服くらいあそこにーー…って、あれ!?」
「お前の服ならさっき治療中にオオカミたちが攫ってってたぞ。
…諦めてそれ着て里に帰るんだな。」
……もしかして、それが分かってたからさっさと服着ろって言ったの?…ほんっと、総隊長って。
「不器用だなぁ。」
「あ?」
「ううん、……服、ありがとうございます。」
ちょっとだけ、…ほんのちょっとだけだけど。
総隊長……もとい、狐さんのこと好きになれそう、かな?
*
ナルトside
本当、どうかしてる。よりにもよってオオカミ相手に襲われるとは。
つーか、オオカミ30匹近くが一斉にあいつに襲い掛かって……どういうことだ?
あいつのチカラの事は綱手と俺とあとは3人と知らないはずなのに……。
チカラとか関係なしに女だから襲ったってことか?
でもあの時。気がついたら体が勝手に動いていた。
もちろん、あいつに怪我を負わせたら綱手に殺されると思ったから動いたんだろうけど…。
けど、思わず怒鳴りつけた瞬間にあいつの裸見てオオカミに不意つかれて……、マジで何やってんだ俺は。
それよりも、あいつの治療法は何とか何ねーのかよ。
男にあんな真似したら治療中に襲われるぞ!
…って、だからどうしてあいつの心配なんかしてんだよ、俺は。
服だって放って置けばよかったのに……。
「会ってたかだか二日の女に何心奪われようとしてんだか。」
きっと、あいつが今までの奴らと違うから、なんだろうな。
俺の中に眠る化け物の存在を知らない、暗部総隊長だと知らない。だから俺はあいつに安心してるんだ。
ーーこいつは俺を軽蔑したりしない、って。
ま、言い争いばっかしてるから俺のこと嫌いなんだろうけどな。
………にしても。
「よく、わかんねぇ。」
心が 、ざわつく。
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