十日目




夢を見た。


何にもない、真っ白な世界であの人に出会った。



そして…私は……。










*


「ふあーぁ、よく寝たー…って、ナルト?」


昨日まで確かにそこにいた人物が……温もりが…朝目覚めたときには消えていた。


「姫、起きてたの。具合はどう?」

「あ、サクラ…さん?」

「サクラでいいわ。もうすぐナルトが来ると思うからそんな不安そうな顔しなくて良いわよ。」

「あのっ…「おはよーってばよ!姫もう起きて大丈夫なのか?」

「病院で騒ぐなバカナルト!!」


ガツンッ…!


うわっ…サクラのゲンコツ、今モロに頭いったよね!?

大丈夫かなぁ…。


「痛いってばね、サクラちゃん!」

「病院で騒ぐほうが悪い。それと、綱手様から伝言で姫の状態が良ければ今日中にでも2人で顔出しに来いって。
主治医としては明日まで待って欲しいけどね。ってか、何やったのよあんたたちは。」


火影が聞きたいのは私が誘拐された件についてだろう。
でも、何で2人一緒なんだ?状況説明なら一人でも出来るのに…。

あー、でも気をつけろって言われた傍からのアレだったから2人いっぺんに説教しようって魂胆かな?

……完治したら暗部の任務増やされそうで怖いなー。


「ちょっと聞いてるの?」
「へっ!?」

「だからっ!綱手様には私からも言っとくけど明日までは大人しくしてる事!分かった?」

「あ…うん。」


別にもう何ともないからむしろ今から火影のところに以降と思ってたのに…。














*


「失礼しまー「このバカどもがっ!!姫に至っては今日まで絶対安静とサクラから報告を受けてるぞ!?」

うわーぉ、のっけから怒りまくりッスね、火影。
覚悟してたけどやっぱ怖いねー。しかも何か絶対安静に格上げされてるし…。

「いや…そう言われたけどもう何ともないので変わり身をおいてやってきました!
そしてこの度は私の失態で火影に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを…「お前じゃない。」

「……はい?」


「私が怒っているのは姫じゃなくてお前だ、ナルト。」


あぁなるほど。私じゃなくてナルトね。もう紛らわしい……って、何で?


「私は姫とお前を一緒に行動させるといった時言ったはずだ。世界を守るために姫が誰かの手に渡るわけにはいかないと。」


それ、火影じゃなくてシカマルが言ったセリフじゃ……。それにナルトは最初から乗り気じゃなかったし。



「なぜ姫から目を離した!?家から出した!?お前の不注意で姫はもう少しで死ぬところだったんだぞ!!」


いや実を言えばすでに一回死んでますがね。


「……すまない。」

「いやいや別に…って、ナルトが素直に謝ってる!?」

「姫、俺はまじめに謝ってんだ。茶化したりすんな。」


いや…茶化したつもりは一切ないッスよ?
って言うかそもそもナルトが謝る意味が私には分からないのに……。

私が勝手に飛び出してあいつの口車に乗って……全部私が悪いのに、何で――…。
「今回の騒動は全面的に俺が悪い。俺がくだらない理由で姫を家の外に出すのを許可したり目を離したせいでこんなことになった。
例え外に出ても俺が傍にいれば大丈夫なんて高をくくっていた。でも実際それで姫は誘拐された。
俺がちゃんとしてれば…「ストップ!!!」


もー、さっきから聞いてれば何なのよ!!何で全面的に自分が悪いしか言わないわけ!?


「ナルトは悪くないでしょ!私が気まずくなって勝手に外に出て、あいつの口車に乗ってほいほい誘拐されて勝手な真似して……。
むしろあんなに迷惑かけたのに世界平和のためとはいえ、助けに来てくれた!だからナルトが悪いなんてことはない!悪いのは全部私よ!」


それに、こんな案単に頭を下げるなんてナルトらしくない!!


「全くお前らは……けどな姫、お前のチカラは脅威なのだ。それが今回危険にさらされた事実は変わらない。
実際姫の身勝手な行動によって起きたことでもナルトに見張りを任せ、本人が引き受けた以上、ナルトには責任がある。
いかなることがあろうとも姫を守ると言う任務をこいつを果たせなかった。火影としてとがめないわけにはいかないんだ。」


そんなこと、諭されなくたって暗部として生きてきた私にも分かる。


「…でも、私のチカラはもう使えないっぽいし……大丈夫かと…「「は!?」」


あ、そう言えば何だかんだでナルトにもまだこのこと伝えてなかったんだ。


「おまっ…それどういう…っ「ミナトさんですよ。」


「父ちゃん…?」



「今朝寝てるときに夢を見て――……。」




何もない、真っ白な世界。



が、一変。夕焼け空が広がる木の葉の街へ。


おそらくここは……四代目火影岩の上。


そして私の真横にはミナトさんがいて……。


「ここは僕が木の葉で一番好きな景色だよ。街全体が見渡せるし、人々の笑顔が良く見える。
風も心地いいしね……。」

「はぁ…って言うか何でここに?私は確か病院で寝てて…「ちょっとした細工でね。」


本当に何でもありな忍だな、ミナトさん。私の夢の中にまで現れる術とかなんですかそれ。


「ん!でも長い間はいれないんだ。」

「じゃあ何で私なんですか?ナルトの元に言ってあげれば…「僕の命を引っ張ってもらったときにかけた細工だからね。ナルトには無理なんだよ。」


あぁ、なるほどね。


「でね、今から君の…姫のチカラを封印するよ。」


「……はい?」


いきなり何をおっしゃるんでしょうかね、四代目様は。


「ん!だからチカラの封印。姫にとってもそっちのほうがいいだろ?」

「いや…それはっ「そのチカラはあっても姫に害をもたらすだけだ。それに誰かに利用されてまたいつ死ぬかもわからない。」


「それは…確かにそうだけど…。でもこのチカラを封印なんて出来るわけないですよ!!」

「ん!僕は封印術の類は得意だから任せて。
それに正確にはチカラを使うときに必要とする特殊なチャクラを寝れなく擦れように封印するだけだから。」

特殊なチャクラ…?

「まぁ本人は無意識にチカラを使ってるからわからないのは無理ないけどね。
残念だけど拒否権はないよ。姫と世界の平和を守るための封印なんだからね。」


「……分かり…ました。」


そういった次の瞬間に私はミナトさんの腕の中にいて……。


「ナルトのこと、よろしくね。
俺の前じゃ母さんの口調真似してたけど普段はもっと口も悪くてあんな元気じゃないんだろ?」


さすがにナルトの親だな。息子の事は何でもお見通しって事か?

「まぁ…アレの相手は簡単には務まりそうにない、です。」

「ははっ、そうだろうね。
…でも姫を大切に思う気持ちは痛いくらい伝わってきたよ?
姫はナルトにちゃんと気持ち伝えたのかい?」


……何でナルトの両親にこんな事暴露しなきゃならないんだ、私は。
恥ずかしさで死ねるぞ。


「…一応、は。」

「ちゃんと声に出して言わなきゃ届かないからね!
じゃあ最期にナルトへの伝言と………。」




「!!!」



「ん!伝言頼んだよ。それじゃ、封印するからね。」


ス……と私から離れお腹に封印術を組み込む。


「これで大丈夫。この封印はいずれ解けてしまうかもしれない。
でもそんな頃にはナルトがこの封印術を組み込めるはずだよ。

それじゃあこれで本当にお別れだ。


姫…――。」


「ミナトさっ…!」















「……姫?」

「え?」

「今朝夢を見て父ちゃんが出てきて……それで?」


あ、いけねっ。私としたことが回想に浸りすぎてた。


「あぁ、何か私がチカラを使うときに必要とする特殊なチャクラ?みたいなのを封印するって言って……封印したと同時に消えちゃった。」

結構省略したけど……いいよね?
ナルトへの伝言は後でちゃんと伝えるけど……アレは私とミナトさんの2人だけの秘密だ!


「そんなことが……といいたいが、四代目火影ならありえるのかもな。」

「だから火影、私普通の人になっちゃいました。ごめんなさい。」

「どうして謝る?これでやっと周りを気にすることなく外に出れる。
喜ぶことであって悲しむことではない。」


……火影。
「ほか「じゃあ話は終わったから俺らはもう行くぜ。」

「待てナルト!まだ話は…ったく。」

シカマルから聞いていたとはいえ、実際に見ると信じられんな。
姫がナルトにあそこまで影響を与えるとは……。


「2人セットだとどうなるのか見物だったが……驚きで何もいえないな。」


「裏のあいつを知ってる奴からしたら不気味ッスけどね。」

「シカマル、ご苦労だったな。」

それでも、姫じゃなかったらナルトはあそこまで変われなかっただろう。

「本当店何者何スかね、姫って。」

「ただのくの一さ……暗部だけどな。
まっ、シカマルも早く新しい恋を見つけることだな。」


……気付いてたのかよ。


「痛いとこサラッとついてくるッスね。
そういえば五代目。前に言ってた皆太陽に惚れるって……アレ、どういう意味何スか?」


「そのままの意味さ。姫の笑顔は太陽そのものだ。どんな暗がりも闇の中も…姫と言う太陽によって皆救われる。
……お前もそのうちの一人なんだから分かるだろう?」


あぁ、なるほど。確かに姫は太陽だ。


「太陽はどんな影をも救い出す、か。」



ナルト、俺はお前のその影が………羨ましいよ。










*

「ちょっ、ナルト!まだ火影の話「そろそろサクラの回診が来る時間だ。」


あ、そういえば私たち病院抜け出してきてるんだった。


「あいつに変わり身なんてすぐにばれる。」

「なるほどね……あ、そだ!ナルト、耳貸して。ミナトさんからの伝言伝えるから。」

「父ちゃんから…?」

「あのねー……。」



「――っ!!」


グラッ…

「うわっ、落ちる!!」


私を抱きかかえて病院言ったほうが早いから大人しくしてるけど体制崩されたらさすがに怖い。

頼むから落とさないでくれよ…。


「もー…そんなに動揺したぁ?」

「…あんのクソ親父!」

おーい、実の父親になんて口の悪い……。


「ったく。姫も覚悟しとけよ?」

「へ?」


……ニヤリ。「これから一生かけて、骨の髄まで愛してやるよ。
離れたくなっても離さねぇから覚悟しろよ?」


カアアアァァ…


「へ……変態ぃいいい!!」






……ねぇナルト。




ありがとう、私の声に気付いてくれて。




ありがとう、私の心の叫びに気付いてくれて。




ありがとう、私に"ともだち"と言う存在を教えてくれて。






ありがとう。私と出会ってくれて。






……ありがとう。








君を………









ナルトを好きにならせてくれて。











(ハローハロー)(もしもし?狐さん、私の声は届いていますか?)
(ハローハロー)(もしもし?寂しがりやのウサギさん。)



(ちゃんと届いてるよ。)

(君の……姫の太陽のように明るい声が。)





「あのねー……

知ってる?ウサギは寂しがり屋なんだ。
だから絶対に手放しちゃダメだよ。……いつかナルトと姫と……君たちの守りたい人と共に僕たちの墓前に来てくれるのを待ってるからね。

それと狐がウサギを食べたらダメだからね!
…まぁ、程々にしておいてあげなよ、ナルト!」
















おしまい。


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