九日目




「ははは…、私は殺せませんよ。何せ私はあなたの心の闇から生まれし存在…。
何度殺されようとあなたの心の闇が何度でも私を誕生させる。
……まぁ、今回は私のおせっかいで余計な事態を招いてしまったようなので消えて差し上げますよ。
でも覚えておいてくださいね。私はいつでもあなたの心の中にいるということを……。」










――…。


昨日あいつに言われたことが頭から離れない。


俺の心の闇?


一人に耐えかねた俺の望んだことが姫が死んで父ちゃんが生き返ることだって言うのか?


ふざけやがって……!!



あの事件から1日がたったけどは目を覚まさない。

父ちゃんは賭けだ、って言ってたよな…。

姫が父ちゃんの命を取り込んだとしても生き返るかは賭け…。

姫の生きたいって気持ちが強ければ生き返るって……


「姫、俺…お前に伝えなくちゃいけないことがあるんだ。
…あの時、死にたくないって…生きたいって言ったよな?
なら……っ」


頼むから……目を開けてくれ――……っ!!!







「……ト?」


「っ!!!?姫!!」


「……なると。」


「目……覚めたんだな。」



「けほっ……けほっ。うん。心配かけてごめ「本当だ、バカ。」



……あれ?もしかして……。



「…泣いてるの?」


「…っ、泣いてねぇよ。あくびしすぎただけだ。」



……いまどきそんな言い訳する人まだいるんだね。
って言うか、今くらい素直に泣いてたって言ってもいいのに…。



「お父さんに…会えたんだよね?」


「あぁ。だけどもう二度とあんな真似すんな。
確かに父ちゃんが生き返ったら嬉しいけど……そこに姫がいなかったら何の意味もない。」



「……何それ、告白?」


「――…わりぃかよ。」


「え…マジ?」


「っ!何でこんなこと冗談で言うんだよ!」


ったく、いくら目覚めたばっかりとはいえ寝ぼけすぎだろ…。
ま、生きてるからこうやって文句も言えるんだけどな…。


「え?これ…夢じゃない、よね?だって……こんな嬉しいこと……。
ダメだよ、ナルト。」


………は?


「私なんかがナルトの横にいちゃいけない。…だってナルトは優しいから。
私はナルトに言えてないことがある。私は汚い人間なの。
私の過去を知ったらナルトは絶対…「俺はそんなことで姫を嫌いになるような人間じゃない。」


「…ナルト。」


「いや…正確には、姫がどんな過去を持っていようと俺は姫を好きでいる自信がある。今は無理に聞かない。
けど、姫の中でいつか話せるときが来て、それでもまだ俺が姫を好きって言ったそのときは……俺と付き合ってくれ。」


私……こんなに人に想われていい人間なのかな?



私みたいな人間……受け入れてくれるのなんてナルトくらいだよ、本当。



「ナルト、私死ぬ前に自分の過去をナルトに話さなきゃってずっと思ってたの。
だから……嫌われてもいいからナルトに聞いて欲しい。」


「あぁ、分かった。」



「私が捨て子って言うのは本当よ。生まれてすぐに路地裏に捨てられていたところを、ある人に拾われた。
その人は……木の葉の闇商売人。私みたいな行き場のない子供たちを拾っては奴隷として働かせるの。
雑務から商人たちのストレス発散に暴力を振るわれたり……時には幼女相手に性行為を要求してくる人もいた。
……生きるために、私たちはそういった仕事もずっと引き受けてきた…。
そういった人の…お気に入りになれば高値で買ってもらって、きれいな服を着せてもらって……一生奴隷として働かされる。」

「………。」


…やっぱり、引くよね。こんな汚い過去持った人間なんて。


「…でもねっ、私が12歳のとき三代目が助けてくれたの!
その当時の私は物心ついたときからずっと奴隷として働いていたから……。
三代目に"おいで"って言われたとき、あぁ…私はこの人の奴隷として奉公するんだ、って思ってた。
でもそれは違った。三代目はやみ商売の根本を潰してくれたの。
残っていた多くの行き場のない子供たちに行き場を与えてくれた。
そして、私に忍として生きないかって言ってくれた。私のチカラはそのときに三代目に知れたの。
そしたら、君のチカラを暗部として里を守るために使ってはくれないか、って。
人と関わりたくなかったし、助けてもらった恩義で私は暗部に入ったの。そこからはずっと一人暮らし。

……三代目が亡くなる前日にね、私に言葉をくれたの。

"笑って…明るく、太陽のように生きなさい。そうすれば、いつか姫の支えになる人が現れるから。
無理やりな形とはいえ、姫が暗部にはいってくれて嬉しかったよ"…って。
別に支えなんか要らなかった。でも、笑ってれば周りは何も言わないし…
何より、三代目の最期の言葉だったし。……そうやって、自分をずっと偽ってきた。
これが私の過去。過去も今も…これからも、自分を偽って生きている私がナルトの横にいていいわけない。」



……何だよ、それ。
そんなもん…全部姫の思い込みじゃねぇか。



「…それだけか?」

「え?」

「お前が俺に話せなかった過去ってのはそれだけか?」

「…うん。」


「姫は…お前の本心は俺に嫌われたいって言ってるのか?」


「…そんなこと…っ、思ってない…けどっ「なら何で俺の横にいちゃいけないなんていうんだ。」


そんなの……言わなくても分かるじゃん…っ。


「私は汚れた人間だから…。」


「俺はそんなことを聞いてんじゃねぇ。姫の気持ちを聞いてるんだ。
お前の本心はそれでいいって言ってるのかよ!!俺の気持ちは!?
過去も今もこれからも自分を偽り続ける?それがどうしたんだ!
過去に偽ったことは変えられねぇ。…けど、今は変えられる。
何でこれからも偽るんだ…っ。どうして偽り続けなきゃいけない!

何で……笑ってるんだよ…!!」


…なに、言ってるのナルト。私別に…笑ってなんか…っ。


「三代目の最期の言葉を今でも大事に忘れずに守り続けてることは構わない。
けど……悲しいときはちゃんと声上げて泣けよ!
俺の前で…もう偽ったりすんなよ。俺は姫じゃないから姫の悲しみは理解してやれない。
でも…涙をぬぐったり、胸貸してやることは出来る。

……だからもういいんだ。自分を偽って、教えを守って……そんなの、今…捨てちまえ。」



「…だめだよ。…泣いたら、止まんなくっちゃう…っ。」


「泣けよ。俺がちゃんと受け止めてやる。」






笑って 明るく 太陽のように生きなさい。




そうすれば いつかきっと 姫の支えになる人が




現れるから。









「ナルトォォーー!!うぁああー。」




ずっと……ずっと……



ほんとうはこうやって誰かの胸で声を上げて泣きたかった。



でも、出来なかった。


"ともだち"がいなかった。



胸を貸してくれる人がいなかった……




三代目との約束が……壊れちゃうような気がした。


私の心の支えだった人が………



私の中から消えちゃう気がした。






「うっ……うぅ…。」


「姫、俺言ったよな?姫がどんな過去を持っていても好きでいる自信があるって。

…やっぱ好きだ、俺と付き合ってくれ。」


……ねぇ、どうしてそんなに…私のことを想ってくれるの?

私……自分を偽らなくて良いの?



ねぇ、ナルト。私……を





「私…もっ、…ナ…ルトっ、のこと……好、…きぃ!」



「ははっ、涙で何言ってるかわかんねぇよ。…でも、ちゃんと伝わった。」



なぁ、姫。俺……「姫ー!見舞いに来たぜー…って」


「ちょっとキバ!病院なんだから……って、ナルト?何で姫抱き合ってんの?」
「あらー、あんたたちそういう関係ー?」
「いの…声でかいんじゃ…。」

「あれっ、…ってことは二人は……。」


ヒュウウウーーーパタン


「気絶したな。なぜならヒナタは「シノ。それは言うなよ。…元気そうだな、姫。」

「シカマル…それに皆も。」

「俺が勝手に呼んだ。皆姫の事心配してたしな。…けどむしろ見舞いは邪魔、か。」

「お…俺がついてるから皆は帰って平気だってばよ!
あんまり大勢いても姫が疲れちまうし…。」

「だそーだ。めんどくせーから帰るぞ。」


パタン…


「ナルト。」

「あ?」

「"ともだち"って、良いね。」

「…たまに鬱陶しいけどな。」


本当はいてくれて嬉しいくせに…。


「でも、もうちょっとくらいいてもいいのに…「姫は俺と二人っきりよりあいつらといたいの?」

「そうじゃないけど…さすがにずっと抱きしめられてるのは恥ずかしいし…。」


皆に見られたのも恥ずかしいんだけどさ。何であのタイミングなのかなー?


「んじゃ、存分にはすかしがっとけ。今日は任務もないから一緒にいてやるし。」


「え!?」


ス……っとナルトの体が私から離れる。


「くす…離れると寂しい?」

「なっ……違うもん!もうねるっ!」


「あ、拗ねた。」


なんか私これじゃガキみたいじゃん。


「じゃ、俺も寝るよ。なんかあったらすぐ呼べよ?」


そういってナルトは私が眠るまでずっと頭を撫でていてくれた。


三代目、私…あなたに助けられて良かった。


暗部に入ってよかった。



あなたの最期の言葉を聞けてよかった…。




狐さんに……ナルトに出会えてよかった。





今日が今までの人生の中で




一番幸せです。











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