八日目



…駆けつけたとき、俺はなぜか胸騒ぎがした。どこかで感じたことがある気配…、

確か……あれは―――……


「父、ちゃん…。」

「ナルト…!?…どういうことだ?ここは木の葉なのか?」


何でここに父ちゃんがいるんだ?


…そんなことより父ちゃんの腕の中にいるのって……!!



「姫っ!」

「ナルトはこの子のこと知ってるのかい?」

「あぁ。それより、何で父ちゃんがこんなとこにいるってば。
16年前に死んでるはずだろ!?」


一応…何があるか分からないから口調だけは戻しておくにしても……。
死んだはずの人間が俺の目の前にいて、姫が倒れてて…



……まさかっ。




「私がオヒメサマにお願いしたんですよ。ナルト君、君のお父さんを生き返らせて欲しいとネ。
君の笑顔を見るためだとお願いしたら喜んで力を貸してくれました。
今は疲れて倒れてしまっていますがじきに…「ちが…っ、かはっ!」


「姫っ!!」


良かった…息してないと心配してたがまだ息はあるみたいだな。


けど、俺の予想が正しければもしかしたら………!!



「ナルト……来て、くれた。…ぉ、父さんに…っ会えた…んだ。」
「違うとはどういう意味かな、オヒメサマ。」


あぁ、良かった。まだ死んでないんだ、私。
不思議だなぁ…。さっきまで死んでたはずなのに…。突然体を引っ張られたと思ったら息してんだもん。

…ナルトが来てくれたって分かったら意識も戻って…。


あぁ、これでやっと本当のことを話せる。
私だけが話さないのはフェアじゃない。だからお願い。どうか最後まで持って…。


私…ナルトに……。



「はぁっ、…私のチカラは…っ、そんな万能なものじゃ……ない。」

「万能じゃない?……それはつまり…。」


俺が畏れている答え。


それは、



我愛羅が死んだときにチヨバアが使ったといわれる禁術と同じ類のリスク……。



「確かに……私のチカラはっ、確かにどんな怪我も…病気も…治せる。
…っけど、何のリスクもないわけじゃ……ない。
このチカラを、っ使ったリスクは……術者に…治した分と同じだけの痛みが……っ、降りかかる。
怪我を治せば、…同じ箇所に怪我を、…っ、病気を治せば…それと同等の苦しみを…。
……っ、死人を、生き返らせれば……同じだけの報いを。
それが…この世の理……。等価交換の法則…っ、どんな人間も…この法則から逃れられることは……できないっ。
そのとき、その場で怪我をした…っ、病気をした、人間を…理に反して私が治すことを……神は許さないっ。」


「やっぱり…そうだったんだな。」

「ナルト?じゃあもしかしてこの子は…「……せいだ。」

「え?」

「お前が生き返ったりするからだ!!お前が生き返らなきゃ姫が死ぬことはなかったのに!!
お前のせいで姫は死ぬんだ!!……お前の…っ。」


いや、父ちゃんは何も悪くない。悪いのは全部俺だ。
姫を守ると綱手を約束したのにつれ攫われた挙句、見つけたときにはもう手遅れになってしまった。




結局、俺は大切なものを何一つ守れないんだ。




「これはこれは…私は余計なことをしてしまったんですかネ?
でも覚えておいてくださいナルト君。私は孤独に耐えかねた君の心の闇から生まれた存在。
今目の前にある現実は君が最も望んだものの答えなのですよ。」


孤独を耐えたねた俺の心の闇?

それの結果が姫が死に、父ちゃんが生き返ることだって言うのか?



ふざけてやがる…!!



「何ふざけたこと言ってんだよ、てめえ。俺がいつそんなこと頼んだっ!!」


ザシュッ…


「ははは…、私は殺せませんよ。何せ私はあなたの心の闇から生まれし存在…。
何度殺されようとあなたの心の闇が何度でも私を誕生させる。
……まぁ、今回は私のおせっかいで余計な事態を招いてしまったようなので消えて差し上げますよ。
でも覚えておいてくださいね。私はいつでもあなたの心の中にいるということを……。」


フ……


俺の心の闇から生まれた存在…?
冗談だろ…と言いたいところだけど、今はそんなことどうでも良い。


「…姫。俺のせいでお前がこんな目にあったんだよな…。
俺のためにって気持ちは嬉しいけど……父ちゃんが生き返って家族が戻ったとしても姫がいなかったら俺は……っ!」



ナルト…?どうして泣いてるの?どうして笑ってくれないの?
私、ナルトに喜んでもらいたくてミナトさんを生き返らせたんだよ…。

ナルトが笑って"ありがとう"って言ってくれなかったら……私っ。



「ナ、ル…トが笑って…くれなかっ……たら、私…っ、死ねない……じゃん、かぁー。」


「どうやら僕はこの子のチカラとやらによってまた生き返っちゃったわけか…。
で、この子はナルトにとってかけがえのない存在。

……親が生き返ってもこの子がいなきゃ意味がない、か…。
ナルトがそこまで大切に想える人が出来て嬉しさ半分、親としては…寂しさ半分…かな。」


コクン…

父ちゃんの言葉にただ黙ってうなずくことしか出来なかった。

もうすぐ姫が死んでしまうと考えたら……何も言えなかった。
自分の無力さに腹が立って仕方ない。

何が人中力だ!何が暗部総隊長だ!!何が……最強の忍だ…っ。


大事な奴一人守れない俺に…里一番の忍なんて……。



「ん!なら僕に任せて。いい案があるんだ。」

「良い……案?」

「僕の考えが正しければ…なんだけどね。
確実に保障は出来ないし、正直…危険な賭けかな。
……この子、名前は?」

「姫。…俺と同じで…ずっと独りぼっちだったんだ。
いや……俺よりも長い間…ずっと孤独に耐えてきた。」

「姫、か。とても素適な名だね。…ナルトと同じでずっと苦しんできたのか。
…だったら尚更生きて笑わなきゃだね!」



――ナルト、……ナルトの言うとおりだよ。私はずっと独りぼっち。悲しむ人なんていない。
私が死んでも、泣いてくれる人なんていないの。


でも、英雄であるミナトさんが里に戻ってきたら…?

ナルトが望んでた"家族"が生き返ったら…?



私一人の命で多くの人が笑えるのなら……私は――…。





「…でも今は違う。

こいつには……姫にはたくさんの仲間がいる。"ともだち"がいる。
……俺にとって、かけがえのない存在なんだ。
父ちゃんとどっちが大事とか…そんなの、比べられねぇってばよ…。
それに俺はまだ…「それ以上は言わなくても分かったから良いよ、ナルト。」


「ミナトさ……っ。」


やばっ、もう意識が……っ。

最後に……ナルトに伝えなきゃいけない私の気持ち……伝えなきゃっ…。



「ん!大丈夫。何があろうとも僕が君を生き返らせてあげる。
君が命を欠けてまで僕を生き返らせてくれて嬉しかった。
…でもね、誰かを生き返らせる代わりに自分が死ぬなんてことはしちゃいけない。
……君はずっと独りぼっちだとナルトが言っていたけど、今は違うだろ?
それに、君が死んだらここにいる僕の息子は悲しみのあまり心が死んでしまうかもしれない。

例え君の死に悲しむ人がいようといまいと……死んだ人間を生き返らせちゃいけないんだ。
それが、君の言う、等価交換の法則ってやつなんじゃないかい?」


――…ミナトさん。


「ごめ……なさっ。私、まだ…死にたく…ないっ!!でもっ…もぅ…。」

「大丈夫。君のそのチカラ…どんな怪我や病気も治せるんならその逆もあるんじゃないのかい?」


……どういう…ことだろ?


「治療するとき、必ずその悪い部分を自分の中に取り込む。それが後々体に変化をきたす。
なら、僕の命を丸ごと君の中に取り込むんだ。そうすれば生き返るかもしれない。
……けど、失敗するかもしれない。これは賭けなんだ。
でもやらないで諦めるより、やって諦めたほうがいいと思わないかい?
それに、君が本気で生きたいって願えば必ず成功するよ。」


「……ミナトさん…。」


「…姫だよね?改めてありがとね、生き返らせてくれて。
おかげでほんの少しだけど、成長した息子に会えた…。
君の…姫のおかげだ。
それに、ナルトに心のそこから守りたいと思ってる人にも会えて、親としてみたかったものが見れた…。
本来なら僕は見ることのできなかったものを見せてくれてありがとう。
姫、僕が守った木の葉でたくさん笑って…幸せに生きてね。


さぁ、僕の命を自分の中に取り込むんだ。」

「は…ぃ。」


ボァアァア……





――…本当、俺の親はいつも勝手だ。現れるのも急だし、消えるのもいつも急だ。




「泣いてはくれるなよ、ナルト。それに、親よりも大事な人なんだろ?」


「…っ!!今度会うときは俺が死んだ時だってば!!
そんときゃ今言った恥ずかしいことの分、殴ってやるから覚悟しとけってばよ!!」


「ははっ、ナルトに殴られるとか…親としては楽しみだよ。
……ん、待ってるな。」


フォ…ン!!


「姫!!!」


父ちゃんが消えたってことは……姫は生き返ったってことか?

……息もしてる、ってことは。


「……良かった…っ。」


「ナルト!!…はぁっ、はっ…姫は?」

シカマル…今ごろついたのか。
まぁ、さっきの光景は見られたくなかったから丁度良いか。


「…さっき一回死んだけど。」

「…は?そりゃ一体そういうことだ?」


「とにかく、すぐに病院に連れて行く。」

「おいっ!待てよ、ナルト!!」


ったく、さっきのありえねースピードについてくのがやっとだったのに、またかよ…。

姫のことになると九尾の力をも我が物にしちまうのか?


いや…おそらくは姫を救いたい一身の力なんだろうな。



「ったく、めんどくせー。」



けど、もう大丈夫だな。





これで全部終わりだ。








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