カーテンコール! | ナノ






「財前っ!」叫びは、太陽の下のグラウンドによく響いた。紅白戦中だという事も忘れて駆け寄ると、その場にへたり込んだ彼女は苦痛に顔を歪めた。俺の蹴ったボールがバランスを崩して仲間である財前の方へと飛んでいってしまったのだ。「ごめん財前!俺、」威力のあったそれは今は地面に転がっている。俺が彼女に触れるより先にマネージャー達が財前をベンチへと連れて行った。伸ばした手が空を切る。「大丈夫だよ、」財前はそう言って笑う。隣にいた鬼道が心配そうに俺と彼女を見比べていたけれど、俺はそんな事に反応している暇なんてなかった。



「スポーツに怪我なんて付き物だよ。」


だから、気にしなくていいって。試合後、財前はお腹を抑えながら笑った。だけど、俺…そう言葉を漏らすと、彼女はぽんぽんと俺の背中を叩いた。


「じゃあ、あたしの言う事一個聞いてよ。それでチャラにする。」
「え?お、おう。」
「財前じゃなくて、塔子って呼んで欲しいんだ。」


思わず拍子抜けした。無理難題を言われてしまうかと覚悟していたからだ。「それだけ?」「うん、それだけ」だってお前あたしの事名前で呼んでくれないじゃん、と呟く。そう言われてみれば確かに、鬼道や円堂達は彼女の事を塔子と呼んでいるが、俺は名字でしか呼んだ事がなかった。「塔子」独り言のように名前を呼ぶと、彼女は嬉しそうに「うん」と言った。


「塔子塔子塔子塔子。…これで良いのか?」
「うん。おっけー。」
「そっか。」


何故だか急に気恥ずかしくなってきて、俺は首にかけていたタオルで頬を覆った。横目でざいぜ…塔子の方を見ると、彼女もまた、手のひらで顔を覆い隠していた。「耳赤いよ塔子」「…これは、夕日のせいだ!」そうは言うがまだ空は青々としていて、俺と彼女は可笑しくなって笑ってしまう。「名前」「え?」不意打ちで呟かれた俺の名前に驚いて彼女の方に視線を戻すと、塔子は頬の赤みをもう隠そうとはせずに太陽みたいに笑った。「じゃあそろそろ、練習しようよ!」「おう!」そんな俺等を呼びにきた浦部がニヤニヤ笑って何があったのか聞こうとしてくるから、思わず「教えない!」と二人でハモった。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -