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にっき





母様は神になるべきなの。

「母様」
「ん?どした、名前。またタケシにいじめられたと?」
「違うよ」

ふんわり柔らかい頬がふうっと緩んで、私の頭に大きな手を乗せて、そうして母様は目を細める。
「またいつものか?名前はほんと甘えっこだなぁ」呆れたような照れたような声音で、母様がそんな事を言う。何だかんだ言って、よく私に甘えさせてくれる母様は、私の大切な存在だった。

母様は神になるべきなの。

そんな事を本人に言えば、きっと、まだ踏ん切りのついていない母様は困ったように笑うんだろう。でも、私たちは、《母の里》の私たちは、みんな、おんなじ事を考えている。
(ゲームに勝つのは、神になるのは、母様しかいない)
その為に私たちは、母様の持つ《増殖日記》を使って母様の手足となって戦うの。みんなで力を合わせて、他の日記所有者を殺して、母様を神様にするの。

ああ、忘れもしないあの日。孤児である私を拾ってくれたのは、他らなぬ母様だった。
親というものを知らずに生きてきた私を拾い、我が子のように育ててくださったのは、誰でもない、この人だった。
ここには、私と同じような境遇の子どもたちがあつまっている。みんな、母様の事を本当のお母さんのように慕っているの。

「母様、私ね、頑張るよ。頑張って、たくさん殺すからね」
「…まぁた、その話かい?名前はおっかねぇ子だなぁ」
「……だって、子どもっていうのは、お母さんを守るために生まれてきたのでしょう?」

ぎゅう、と握りしめると、素敵な母様の匂いがする。ああ、とっても温かいの。この人を守るためなら、何でも出来るって、そんな気持ちになれるのよ、私。
立ちふさがる奴はみんな、みんな、みんな、殺してやる。私が死んでも、おりんが死んでも、誰が死んでも、母様が神様になるまでは、殺して、殺して、殺して……。

「お母様、…ううん、かまどさん」
「……名前」
「かまどさんの為なら私、鉄砲玉にだって、なるからね」

だって私、かまどさんの事、愛してるんだから。





にっこり笑って私は胸ポケットに入れてあった携帯を取り出した。私の日記は《母様日記》。大切なひとを守る為に、私が盾になる為に、母様からいただいた、世界で一番素敵な贈り物なのよ?


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