思うが儘に | ナノ





覚り悟られ諭される(さとり)


言葉を音にしなくても意図が伝わるなんて、それはそれは素晴らしい能力だと思うわ。
そう思考すると紫から貰った外界のお菓子どおなっつを味わっていたさとりが苦笑を浮かべる。
「皆が貴女みたいな能天気なら良かったんだけどね」能天気とはひどいことを言ってくれるものだ。私は人様に見られて困るような事を考えていないだけだというのに。


「貴女は何処までも異端だわ。私のペットは皆離れてゆくのよ。心を見られる事の重要さを理解しているから」


それって、私が間抜けだと言いたいのかしら。さとりは意地悪なのね。


「意地悪なんかじゃないの。それほど、私の能力が忌み嫌われるものだという事よ」


確かに、それは、間違いない事実だ。対象が人間でも、妖怪でも、神であったとしても。ずけずけと自分の領域に入ってくる覚り妖怪はいつの時代だって虐げられてきた。
いや、虐げられた、というのは語弊があるかもしれない。正確に言うならば、『無視されてきた』が正しいだろう。
肉体的な接触は殆どないだろう。近づくだけで考えを読み取られるのだから、暴力では殊更意味がない。だから、無視された。遠くに追いやられた。地霊殿に、嫌われ者の集う場所の最奥に。
いつだって誰だって嫌いなものから目を背けたいという感情が大なり小なり存在するものだ。本人がその気持ちに気づいているかは、別として。だから、その判断はある意味間違い等ないのだろう。
けれど、私は違う。私はさとりから、そしてこいしからも、目を背ける事はしない。
……別に、彼女たちが可哀相だから、とか、同情した訳じゃない。私の心なんてまるであけっぴろげで隠す必要なんてありはしないの。どうぞお好きに見てください。どうせくだらない事しか、考えてないのだから。


「貴女らしいわね」


その通り。だって私なんだから。
大体、喋らずとも会話が出来るなんて何て楽なんだろうと私は思う訳よ。傍から見たら滑稽な姿だけど、ここには私とさとりしかいないのだし?喋るのも案外疲れるものだから、私としては大助かりな訳なのですよ。
「でも、私は貴女に喋ってほしいわね」珍しくさとりがそっと微笑む。


「だってそうじゃなきゃ、貴女の声を聞けないでしょう?」


おやおやこれはまた照れる事を言ってくれる。


「それに、確かに私は他人の言いたいことが分かるけど、普通に会話だってしてみたいのよ」
「あら、そうなの」


それじゃあこれからも手土産を持って度々ここまでやってこようかしら。骨が折れる道のりだけど、まあ、さとりの笑顔の為なんだもの。




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