思うが儘に | ナノ





ブロークン・天狗(文)


「ゴシップ天狗にくれてやるお茶菓子は一個もない」
「まあまあ」


まるで我が家のように寛ぐ文に冷めた目線を一つ送る。とは言え私が今食べている菓子も御茶も本来は神社の所有物であり霊夢の所有物であり私の物では全くないのだけれど、まあ、それは、こう、居候だから。我ながら傲慢ちきな居候である。


「大体ゴシップなんかじゃないわよ。私の新聞は」
「よく言う。この前の一面なんて酷いものだったじゃないの」


レミリア嬢とフラン嬢の喧嘩なんてどうだって良いものを一面にするくらいあの時はネタが無かったのだろうけれど、それにしたって色々酷い。あの記事のせいできっと吸血鬼のカリスマ度はだだ下がりだろう。そらそうだ、ワインの取り合いなんてお嬢様がする事じゃねえ。
まあ、あの現場を抑えたことは評価しよう。はたてとは違い文は足で稼ぐタイプだから、幻想郷でもかなりアレなレミリア姉妹のプライベートを激写なんて相当凄い事だ。伊達に幻想郷屈指の力の持ち主と呼ばれているだけある。妹の方なんて引き篭もりなのにね。
そんな文が最近興味を惹かれた存在というのが私である。普段は格下だのと見下しているのに取材相手となると手のひらを返すその胡散臭さは幻想郷随一でもある。天狗じゃなくてコウモリにでもなったら如何。
まあ最近は新聞を購読するようになった私には態度を軟化させてはいるが、それでもやはり流石天狗だなと思わせるような事を言う。嫌いではないけれど。


「じゃあそんな私を助ける為だと思って、取材させてくださいよ」
「だが断る。大体私の何を記事にしようっていうのよ」
「それはもう、スリーサイズから能力の基礎応用、好みのタイプに苦手な科目等多岐に渡り名前さん分析をするつもりですが」
「プライバシーの侵害ってレベルじゃないし私を殺す気か」


ここ幻想郷では敵に能力を知られる事はとても不利なものである。最近はスペルカードも浸透してきて肉弾戦というのはあまりなくなってきたけれど、それでもやはり一部の馬鹿どもは遠慮なくそういう勝負を望んでくる。只でさえ逃げるのに精一杯な現状なのに、能力徹底分析されたら私の逃げ場がなくなる。一応これも弱点はあるのだ。
「というか、そんなの誰が得するのよ」くだらなすぎる情報で読者を釣れるとお思いか。そういうとしかし文は私を嘲るようににまあと笑った。
なんかイラつく。文は私をイラつかせる天才なのだろうか。嫌いではない。マゾでもない。


「貴女はもっと敏感になるべきね」
「周りに?」
「ええ。そうすれば、こう、色んな人が報われると思うわ」
「別に私聖人君子じゃないし他人はわりとどうでもいい」
「まあそう思っていてくれる内は私もやりやすいんだけどね」


それじゃあ取材させてくださいなんておかしな事を言う天狗は簀巻きにしてやろうか!霊夢に頼んで!
同じ天狗でも椛の方がよっぽど可愛げがある。と言いつつ嫌いではないのでいつものようにお茶菓子をくれてやる私だった。




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