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「ランカって、鈍感よね」


唐突にそんな事を言われ、カノンの作ってきたブラストクッキーを咀嚼していた私はちらりと声の主に目を向けた。
私と同じようにクッキーを食しているジーナは、いつものようによく分からない笑みを浮かべている。


「ランカさん、鈍感なんですか?」
「それを本人に聞くのかしら、カノン。…というか、変な言いがかりはやめてくださらない?」


紅茶を啜っていたカノンが首を傾げて問うものだから、私はため息をつきながら問題発言をかました本人にそう言った。
今日はたまたま三人とも予定が空いたので、どうせだしとお茶会を開くことにしたのだ。
といってもまあ、カノンが作ったお菓子なり、私が用意した飲み物なりを適当に食べつつアナグラ内の噂を喋ったりするというなんてことない物なのだが。
それにしても、私が鈍感だなんて、どういった了見だろうか。
クッキーを食べ終え、指をぺろりと舐めながらジーナが答える。


「だって、シュンの気持ちに気がついてないじゃない」
「シュン?アイツがどうかしたの?」
「…ああ、そういう事ですかぁ」


行き成り登場した名前に眉を顰める。けれど、カノンの方はその答えに納得したのか、笑顔で相槌を打った。


「ちょっと待ちなさいよ!何でカノンが理解できて私が理解できないの!?」
「そっそれ酷くないですか!?」
「まあ、その言い分には一理あるけれど…だからこそ、鈍感って言われるのよ」


そう言われてしまうと、ぐうの音も出ない。
シュンの気持ち…って、一体どういうことなのだろうか。
あんな単純馬鹿が考えていることなんて、それこそ、金儲けぐらいだと思うのだけど。
ただ、目の前の神機使い二人に問いただそうったって、そう簡単に行かないのは明白だ。
だって、二人ともとてもにこやかに微笑んでいるのだから。絶対に、この状況を楽しんでいる。


「まあ、別に鈍感は悪い事じゃないわ。私的には…ありがたいし」
「…はあ?」
「確かにそうかもしれませんねー。そういう関係になったら、私達と過ごす時間が短くなっちゃいますし」
「…つまりどういうこと?」
「好きよランカ、って事」


なっ。身をのけぞって目を瞬かせる。ジーナは相変わらずにやにやしているし、カノンもにこにこと微笑んで私を見ている。
そんなもどかしい視線に耐え切れず、私は思わず目を逸らした。


「あら。真っ赤よ?」
「知ってる!」


ぐいっと紅茶を飲み干す。喉が火傷しそうだ。


こんな日常も悪くはないけど


出来ればもっと私に優しい日常であって欲しいわ、と思いながらため息をついた。

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