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娯楽に乏しい昨今は、面白ければなんでも良いらしく、アラガミの写真集なんてものが発売されていたりする。
資料室でそれらを見つけてきた俺は、暇つぶしにとベッドに寝転がってぱらぱらとページを捲っていた。
同じく暇らしいジーナも、無表情でそれを眺めている。
まあ、ゴッドイーターとして誰よりも最前線でアラガミを見ることは出来るが、こんなふうに静止画をじっくり、なんてのはあまりないので、それなりに楽しめる。
…一応、これでも人類の敵なんだけどなあ。
今見ているのはウロヴォロス種の写真集だ。結構アングルが凄まじいのだが、カメラマンはよく戻ってこれたな。度々救出任務が組まれるから、無事ではないようだが。
ふと、ページを捲る手を止める。


「アマテラスまであるのかあ」
「あら、本当ね」


視線の先にあるのは、最近発見された第一種接触禁忌アラガミであるアマテラス。ウロヴォロスと大体同じ骨格をしている。仕事が早いなあ、などと思いながら、呟く。


「アマテラスって、でっかいよな、胸が」
「…前々から性癖が凄まじいと思っていたけれど、まさかアラガミに発情してるなんて」
「……いや、そんな目で見られても、別に発情しているわけではないですし」


アラガミに発情する人間が果たしてい…そういえばシオってアラガミだっけ。
ウロヴォロスを女にしたような(アラガミに性別があるのかは定かではないが、まあ、感覚で)アマテラスには、確かに胸がある。
いや、うん、胸、だよな?最初に見た時はあまりの壮観に頬をひきつらせたものだ。
人間のそれと違うのは柔らかさだが。バスターだとかきんかきんだった。
そこまで考えて、ううむと唸ってみる。


「やっぱり胸はでっかい方がいいよ。うん。こいつみたいな奇乳は嫌だけども」
「所詮男はそんな物ね。だからモテないのよ」
「きっついなー。いやーそりゃだって、男の浪漫でしょうよ」
「くだらないわ」
「はっはっは…む」


取り繕うように笑ってから、ふと気がついた。目の前の彼女の横顔は、少しだけいじけているようにも見える。
口調もなんだか刺々しかったし、ああ、そういえばジーナって、


「胸ないもんなあ」
「誰の胸がないって?」
「痛い痛いすごい痛い。いや、だって本当の事じゃんか…」


途端彼女は無表情で俺の頭を掴み、ぎりぎりと指で締め付けてきた。
地味に痛い。
生憎とそういうことされて嬉しい人種ではないから、引きつった笑顔を浮かべながら彼女の手首を掴んで必死の抵抗をしてみた。


「本当なまえって、デリカシーないわ」
「他人の顔色見るの苦手なんだよね」
「だからいつまでたっても出世出来ないのよ」
「…はっはっはっ」


図星。胸をぐさりと刺されたような感覚に、逃避するように笑ってみる。
まあ…他人の気持ちを探るのが難しい俺でも、今の彼女が浮かべている表情を見たらうかつなことも言えないわけで。


「胸の大きさも大事だけどさ!やっぱ一番は、好きな人の胸だよ」
「胸にはこだわるのね…」
「うん。ね、だから、俺が一番好きなのはジーナの胸さ」


俺の言葉に、ジーナは首を小さく傾げて微笑んだ。頬は桃色で、白い肌によく映える、とぼんやり思う。


「…ふふ。それじゃあ、これから私の為に、ミッションについてきてくれないかしら」
「オーケーオーケー。俺様に任せなさい」
「期待してるわ」


お互い照れ隠しみたいに視線は合わせないけど、お互いの気持ちは痛いほどよくわかる。
先ずはこの写真集を資料室に戻してこないと。そんなことを考えながら、ベッドからおりた。


好きなものは別腹って言うじゃないですか



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