「ウルちゃんウルちゃん」 「…なんだ。」 「大好きだよ?」 「そうか。」 彼女があまり好かない愛称で呼んでも、覚えたばかりの言葉を言っても、ウルビダは本から目を逸らさない。それがなんとなく…なんとなく、寂しくて、私は目に見えてつまらなそうにソファに身を預けた。肌触りの悪いソファにも、苛立ちが募る(今度グラン様に言って買い換えてもらわないと!)。こんな曇り空の日は練習をする気にもなれない、だからウルビダを部屋に呼んでいるのだというのに。当の本人は分厚い本に夢中で、私の話など半分くらいしか耳に入れてないのだろう。それが友達に…友達に対する態度なのだろうか。生まれて間もない私には、よくわからないよ。 「ウルちゃんウルちゃん、暇。」 「そうか。」 「構ってよー。」 「うるさい」 体当たりをしかけるも、それはウルビダの手によってがっちりと塞がれてしまった。そのまま受け流されて、ぼふ、と音を立ててベッドに放り投げられる。大の字の体勢になって、ひま、と呟いた。 「ひまひまひまひーまー、ウルちゃんーひまー!」 「これでも読んでろ。」 ウルビダに本を渡される。彼女が読んでいるのとは別の、しかしとても分厚い本。ためしに適当なページを開いてみるも、難しい漢字ばかりでとても読めたもんじゃない。半ばぶつけるように返して(後ろからの不意打ちなのに彼女はしっかりと受け止めてみせた。むかつく)、何事もなかったかのように…何事もなかったかのように、また本に視線を戻した。ぞんざいな態度。私の涙腺は崩壊をはじめる。 「う、ううう、ウルちゃんの、ばかあ…」 「…はぁ。」 私が泣きはじめたのに気づいて、…気づいて、ウルビダはため息をついた。振り返って、白くて細い指(同じにんげ…宇宙人なのに、私とは大違い)で掬うように涙を拭った。しかたないな、そううわ言のように呟いたウルビダは困ったような笑みを浮かべていて、私は泣くのをやめた。 「体育館で練習でもしようか、」「…うん」、交わされた言葉はマシュマロみたいにやわらかい。おなじく、マシュマロの笑みで彼女は私を抱き上げた。ふわり、温かい香りがした。 (だだをこねるのは) こどものとっけん! |