「みょうじさん、はい」 「おわ、ありがとう、目金君」 グラウンドを駆ける皆を遠目に眺めつつ、目金君の持ってきた缶ジュースを受け取った。体温に負けじとひんやり冷たい缶。ジャンケンで勝った私は彼に驕ってもらったのだった。私と同じように秋ちゃん、春奈ちゃん、冬花ちゃん、と渡していく目金君。グラウンドに視線をやったままプルタブを開けて口をつける。喉を通った触感に、ごほごほとむせた。 「こ、これ炭酸?」 「そうですけど…、もしかして飲めませんでしたか?」 「飲めなくはないんだけど、少し苦手なんだよね」 このしゅわしゅわする感じがどうも…そう苦笑いすると、隣に座っていた春奈ちゃんが「そういう人いますよね」とうなずいた。「なまえさん、いる?」まだ口つけてないから、とオレンジジュースを差し出す秋ちゃんにかぶりをふって、なんとか胃に押し込もうとする。一気飲みしようとして、またむせた。 「炭酸イッキはキツいと思います…」 「…うん、今すごく身にしみて思った」 「仕方ありませんねえ、貸してください、みょうじさん」 「うん?」 目金君に言われるままに、缶を手渡す。彼はそれをそのままぐいっと口に含んだ。か、間接キスですかね!?春奈ちゃんがきゃあっと色を帯びた声を出す。目金君が、飲んでくれるのだろうか。そう思っていたのもつかの間、すぐに視界が暗転した。秋ちゃんや春奈ちゃんが黄色い声をあげるのが聞こえる。と、そうでは、なく。 「…ぷはっ」 「めめめめめめめ目金君!?」 口内に流されたジュースを飲み込んで、私は慌てて口を押さえた。 「しゅわしゅわ、薄くなったでしょう?」 「う、うん!だけどね、その、あの、」 「いっ、言っときますけど!僕は誰彼構わずこんなことするわけじゃないですから!」 かああっと真っ赤になった目金君はそう言ってそっぽを向いた。同じく私も顔を赤くさせて地面に視線を向ける。喉に通った炭酸ジュースは、炭酸が抜けてとても甘かった。 |