稲妻11 | ナノ






針が回るのは遅い。ちくたくちくたく、ほら、愚鈍。「まるでなまえみたいだね」吹雪が笑顔をたたえてそう言うものだから、私は彼を睨みつけた。「どういう意味」「そのままの意味だよ」ああ苛々、する。薄氷のような笑みは私をとても苛立たせるけれど、…なんでも、ないわ。大嫌いなあの子は私を思考のふちへとおいやる。追い詰められても私の口からはその単語はでそうにない。「寝ないの?」「眠れないの」「へえ」臆病者、あの子はそういった瞳で私を見つめてくるから、私は悠々とした態度でそれを出迎えた。ところが内心はひどくどきどきばくばくと働く心臓をわずらわしく思っていたし、その音をしずめられたらどんなにすてきかとナイフでも突き立てたくなっていた。(しとしと、ざあ、ざあ)。「雨が降ってきた」「そうだね」いじらしい、そんな駆け引きも時間は流れる。ちくたくちくたく、針は止まりこそしないもののゆっくりゆっくり時を刻んでいく、はずなのに、時刻を示すためのそれは今は12と13のあいだでぐらぐら揺れてしまっていた。揺らぎはまどろい、戸惑わせる。ふふふ、微笑った私にあわせるように吹雪も笑った。「ほんとうに君は愚鈍だね」「僕に恋心すら告げられないのだから」のろまな亀でも自分の気持ちには素直だよ。吹雪はそこで初めて笑顔を捨てた。いじらしい。「幸せは最後にとっておきたいの」「そのほうが美味しさが増すでしょう?」










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