稲妻11 | ナノ




(GL)

今日はグラン様と五分も話せたんだよー、なんて、なまえが楽しそうに笑うものだから、私はそうか、と共に微笑む事で胸の奥の腹立たしい気持ちを抑える。伝えようのない想いはぐちゃぐちゃに潰してしまえば良い。


「えへへ、明日ね、一緒に練習する事になったんだあ」
「良かったな、…でも、明日は私と練習するんじゃなかったっけ?」
「うん、その事で謝りに来たの。」


ごめん!と手を合わせて頭をさげる彼女に、私は苦笑して良いよ、と首を振った。本当は明日彼女と一緒に練習する事をとても楽しみにしていて、だからこそ…少しだけ、悲しく思ったりしたのだ(勿論顔には出さなかったが)。随分前からなまえはグランに片思いをしている。片思いといっても、端から見ればそれは両想いと言っても差し支えのないもので、あのグランでさえも、なぜかこの私に相談をしに来た事もある。ああじれったい、苛立ちが募る心の中とは違い、私は極力なまえには笑顔を向けるようにしていた。無理だとはわかっていたとしても、可能性は潰したくはないだろう?無謀だとは思っているが、しかし、それくらいしないと、私は。


「今度一緒に練習しよう?本当、ごめん…。」
「勿論だ。じゃあ、私は用があるから。」


さらさらふわり、彼女の頭を撫でると、くすぐったいのか気持ち良いのか、なまえは目を細めた。彼女からは見えない方の手が、握り拳を形作る。爪が肉に食い込んで、しかし痛いとは思わなかった。じゃあ、と手を振ると、彼女は−…まるで犬のような尻尾をぶんぶんと振っているように…、満面の笑みを見せた。

(やめて、見ないで、私を)

罪悪感に苛まれながら、私は重苦しいドアを閉めた。はあ、とため息が漏れ出る。どうしてだろうか、涙が(止まらない?)。


私が彼女と触れ合う方法は、ふたつ、ある。ひとつは、こうして彼女の良き友人となり身近にいてやる事。ひとつは、彼女とお互いの心を繋ぎ合う事。但し私は、ひとつの選択肢しか選ぶ事が出来ないのだ。何故ならあの子は、愛しいあの子は、もう既に彼とお互いの心を繋げてしまっているのだから。



マアラシのジレンマ
(ただ、し…それは一方的な、)







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