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稲妻・春奈(百合)




「春奈ちゃん、眼鏡貸して」
「え?いいですけど」


私の言葉に春奈ちゃんは疑問符を浮かべつつも眼鏡をはずして私にくれた。春奈ちゃんがいつもかけている眼鏡。それを、自分にかけてみる。う。


「ぐ、ぐわんぐわんする」
「眼鏡って自分のじゃないといけませんからね」


それに、私はそこまで目が悪いわけでもない。かける必要はまったくないのだ。「ありがとう」と言って眼鏡を返すと、春奈ちゃんはそれを掛けなおしながら「どうして貸してなんて言ったんですか?」と聞いてきた。


「笑わない?」
「笑いませんよ!」
「あのね、眼鏡をかけたら春奈ちゃんみたいになれるかなあって」
「私、みたいに?」


いつも元気で明るい春奈ちゃん、少なからず、私はあこがれてきた。そんな彼女の眼鏡をかけたら、私も同じ視界を見渡すことができるのかな。私も彼女みたいになれるかな、…なあんて、ばかな話。でも、春奈ちゃんは至極真面目な顔で私の言葉を一蹴した。


「私みたいにならなくても良いですよ」
「どうして?」
「だって、私は今の先輩が大好きなんですから」


そういわれてしまうとぐうの音も出ない。「そうだね」と呟いて、私は彼女の首に腕をまわした。甘い匂い。嗅ぎ慣れた春奈ちゃんの匂い。


「私も今の春奈ちゃんが好き」


いつまでもえいえんにかわらないわたしたちをのぞんで。お互い好き合う私達のままで。なあんて、結局は戯言なのかしら。






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