「でね、そのときのアイシーったらとってもかわいかったんですよぉ!」 「へえ。なまえはあいつの事良く見てるんだな」 「はいー。親友ですから!」 どたばた喧騒が始まっているグラウンドの中心とは違い、ブロック練習を続けていた俺達はそれなりに和やかなムードになっていた。といっても、話すのはもっぱらサッカーかアイシーのこと。趣味も性別も違う二人の共通の話題といえば、それぐらいしかないからだ。 それにしても親友か。まあ、友達、ではないだけマシな方なのだろうけど、この鈍い少女が妹の想いに気づくのはまだ大分先の事になりそうだ。小動物のように跳ねる彼女を見て、そんなことを思った。 「君は、アイシーのことは好き?」 「ええ、もちろん」 「じゃあ俺のことは?」 「うええ、えっと、す、好きですよ!」 これからが困難だということは、今の彼女の反応からして明らかなものだった。「可哀相なアイシー」くすくすと笑うと、なまえは不思議そうに首をかしげた。彼女の後方で、俺をメドゥーサのように睨みつけるアイシーを見た。 「報われないなあ」 「何がですか?」 「アイシーが」 |