aph | ナノ



(百合)


白いなあ、とぼんやりと思った。灰色がかった髪、薄い肌。その中に位置する青色の瞳が、とても輝いてみえた。ナターリヤは私の視線に気がつき、何、とだけ零す。


「別に。可愛いなぁって。」
「馬鹿か。」
「…え、酷い。」


ふい、と顔を伏せるナターリヤ。長い長い髪が彼女の瞳を隠した。さらさらと文字を書き連ねていく彼女をじいっと見つめる。私が暇つぶしに読んでいた推理小説は、もう読み終わってしまった。古びたそれを膝の上に乗せ、彼女だけを視界にいれる。黒いリボン。昨日は赤だったなぁ。一昨日は白、一昨昨日は青。彼女の事なら何だって覚えている。昨日イヴァンさんをストーキングしていた事も、一昨日トーリス君に話しかけられていたことも、全部。でもその記憶の中に、私が彼女に話しかけられたという記憶だけはないのだ。

私は彼女の事が好きだ。ナターリヤは、どうなんだろう。

冷めた紅茶を喉に通して、ナターリヤは筆記を再開する。私の事なんて眼中にないかのようなその行動が、私の小さなハートをぼろっぼろにした。むうう。ナターリヤには心臓がないんじゃないだろうか。


「大好き。」


ナターリヤは私に視線を合わせた。その顔は無表情で、私はちょっと傷ついた。


「愛してる。」


先程と変わらぬ声音でそういうと、彼女の顔が若干の朱を帯びた。あれ、あれれ。これってなんだか。


「愛してる。愛してるの。大好きなの。誰よりも、ずっと。」
「…う、うるさい。」
「ナターリヤは?ナターリヤはどうなの?私の事好き?嫌い?愛してる?愛してない?」


こんなに混乱している彼女は、はじめて見たような気がする。言葉にならない声をあげ、彼女は私に目を合わせる事なく部屋を出て行った。白い肌に赤い色は映えるなあ、なんて思いながら、私は本を机の上に置いた。早く彼女を追いかけて、先程の答えを聞かなければ!


青と白と時々赤いの。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -