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バッシュさん家のリヒちゃんは、とても可愛い女の子である。私が笑えば同じように微笑んでくれるし、仕草がすごく女の子らしくて、思わず同性の私でもきゅんと来ちゃう子だ。

そんな事を思い出して、ふと、書類と睨めっこしているバッシュに「リヒちゃんをお嫁に下さい」なんて事を言ってみると、彼は顔を驚愕に染めて私を見た。


「う、嘘であるな!?」
「うん。冗談。」


私の言葉にバッシュはハァとため息をついた。どこか安心しているようである。くそう。そんなにリヒが大事かこのシスコンが。


「驚かせるような事を言うな、なまえ。第一リヒは誰にもやらん。」
「固いなー。リヒに好きな人が出来たらどうするの?」


今の所はリヒはバッシュの事が好きなんだけど、それも兄愛という物で、いつかは素敵な殿方にでも恋焦がれるのだろう。バッシュは仏頂面で「そんなもの」と言う。


「我輩が近づけさせる訳ないのである。」
「うわあ酷いお兄様だこと。」
「リヒは我輩の所だけにいれば良いのである。」


その言葉に私は少しどきりと来た。それは、リヒを一生離さないという事なのだろうか。一生、自分の傍に置いておく…つまりは、その、…。


「じゃあ、私は?」


気づいたらそう口に出していた。バッシュが不思議そうに私を見るのにも気にせずに、私は言葉を紡いでいく。


「私がもしも…そうだなぁ、フランシスあたりを好きになって、それでバッシュ達の元から離れていったら、どうする?」


聞いた後、私は自分の言葉の意味を理解し真っ赤になった。なんて恥ずかしい事を聞いたんだ私は。バッシュも意味を理解したのか、少し顔を赤く染め、顔を逸らしながらぶつぶつと答える。


「そんなの、一生離す訳ないのである。」
「…え?」
「お、お前がいないとリヒが悲しむからな!リヒが!断じて我輩の為などでは…ッ!」


耳まで真っ赤になって否定しようとするバッシュに、思わずありがとう、と言った。小さな声で「どういたしまして」と聞こえた気がした。


兎と女の子 



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