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(死ネタ)


とても綺麗な人間でした。



美しい髪を風に遊ばせて、彼女は佇んでいました。

人見知りの激しい私でも。思わず手を伸ばしてしまうほどでした。




「私、なまえ。貴女は?」

「…ナターリヤ。」

「そう!可愛い名前ね!」




人間というものが苦手でした。

私の民でも、それは同じ。

何故笑い、何故泣くの?

その感情が、理解できませんでした。

私が兄さんに抱くあの身が焼かれそうなほどの感覚も、人間にとっては気持ち悪いものでしかない。

兄だからですか。

血がつながっているから、駄目なのですか。




そんな私にも友達が出来たのです。

月のような柔らかな笑みが印象に残る、美しい少女でした。

一人でいた私に、話しかけてくれた私の民。

彼女は私の事については知らないようですが、それでもこの私に話しかけてくれた事が嬉しかったのです。

ああなんなのでしょうこの甘い感覚は。

いつしか私は、彼女に兄さんと同じ感情を抱いていたのです。

しかしこれは悟られてはいけない。

この感情は、同姓である彼女に抱いてはいけないものなのですから。

人間というものは窮屈だ。何故こんなものに縛られないといけないの。




そんな彼女にも、想い人が出来ました。

いつも図書館で一緒になる、人のよさそうな笑みの青年でした。

その青年を見た瞬間に私は感じてしまったのです。

ああ、この青年となまえが想いあってしまえば、私はまた一人になる。

私の周りに人間がいなくなる。

それは私の我侭。国であるからして仕方のないことだと、分かっていたはずなのです。

しかし。私はそのとき悪魔になってしまったのです。




青年は見るも無残な形で、その生を終えてしまいました。

私の家の人なのに、ああ殺してしまった。

上司は何も言わずその青年の処理をしてくれました。

国が自国の民を殺すなんて、あってはならない。

この時ばかりは、いつも命令しかしない上司をありがたくおもいました。




これで終わると思っていたのです。

恋焦がれたあの人を失ったなまえは、最初こそ生気を失ったようでしたが、直ぐにまた元に戻りました。

また元通りになったのです。また私となまえは仲良く過ごすのです。

胸が高鳴ります。ああなんて素晴らしい毎日なんだ!

しかし彼女の周りには、私の目障りな人間がたくさんいました。

その人間が彼女に近づく度に、私はその手を赤い液体に染めました。

家族も、友人も、近所の人も、通りすがった人も。

なまえの周りには私しかいないのです。そう思うとうきうきしました。

しかしなまえは気づいてしまったのです。自らに語りかける『人間』が異質なものだということに。

なんせ私だけは、いつまでたっても消えないのです。

彼女は私を疑うようになりました。仕方ありません。





ついに、私が彼女のペットを絞めているのを目撃されました。

他でもない彼女に。

真っ赤に染まった私のスカートを見て、現実を思い知らされたようでした。

始まる口論。

私は貴女を愛しているの。私は貴女を自分だけの物にしたいの!

しかし親友である彼女は、その気持ちを理解してくれませんでした。

彼女は私を背に、走り出します。

私の気持ちを理解してもらいたくて、私を愛してほしくて、私は追いかけました。




「ナターリヤ、どうして!」

「私が、貴女を愛しているから。」

「だからって…なんで皆を…!」

「私をなまえを切り離す『人間』なんて、いらないのよ。」




私は彼女の肩に手を触れようとしました。

彼女はそれを拒否して、手を振り払う。

途端なまえの体はふわりと浮いて、次の瞬間には遥かしたにある地面にその身を叩きつけていたのです。

足元には階段。足を踏み外したのでしょう。

私はその場に崩れ落ちました。




私は何十人もの民を殺め、最後には最愛の人までもこの手で殺してしまったのです。



それが、私が自分を理解し、人間を拒絶することになった最初の日でした。









その『罪』はあまりにも重く、
(私は一生を使ってでも償わないといけないのです)
していた、だけなのに)





Sound Horizon
Baroque












完璧偽造すいませ…!
サンホラのバロック聞いて思いついたネタです。
私的解釈。というかそのまんま!
簡単に言うと黒霧は百合にハマっちゃったよ!という話(ちょ

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