「・・・だから、どうして連れて来たのか聞いてるんです」



甲板に行くと、案の定あいつに捕まった。
じりじりと睨みつけながら取り調べるかなように
かれこれ1時間以上もこのやり取りが続いていた。



「だからペンギン、気まぐれだ」

「そんな説明で納得するとでも思ってますか?」

「・・・チッ」


舌打ちし溜息を吐けば、溜息を吐きたいのはこっちだと言わんばかりの顔を向けられた。

俺だって。

(何を理由に連れて来たかは明確じゃねぇってのに)


あの声に魅了されたか?
天使が堕天したかのような姿に、
笑いながら「ころせ」と言った女の様子に、
犯されたにも関わらず純粋そうな光を宿したその目に?


考えることすらも億劫に思え、とにかく連れていくと俺が決めた。と乱暴に告げれば
なんとも恨めしげに、しかしその口から文句が零れることは無かった。






「・・・ペンギン、あいつは見世物小屋にいた女でな
娼婦かは別としてあの女、部屋に入ってきた俺になんて言ったか分かるか。」

「・・・・・・助けて、ですか?」

「あぁ、そう思うよな。」


ペンギンが俺の問い掛けに、間を置いて答えた。
自然と口角があがるのが分かる。
ぐっ、と刀を鞘の上から握りしめた。



「殺せと言った」

「命請いも無しに?」

「そうだ。すぐにそう言いやがった。」


なんて女だろうな。
まだ19かそこらだろう。
そのくせ殺せとは、人生損してると思わねェか?

そう笑いながら聞けば、「・・・好きにしてください」とそっけなく返って来る。
つれねェな。
まぁ最も、好きにさせてもらう。
俺の船で何しようと俺の勝手だ。



「けどあの女、自分を監禁して慰み物にしてた男を殺すとなると顔色を変えた」

「まさかあんた、殺したんですか?」

「そこまで馬鹿じゃねェよ」


バラバラにしただけだ。
そう答えるとそれでも足が付く、と不服そうな様子だ。


「あいつに興味が湧いた。
理由ならそれで十分だろ?」


明るく照らされた広大な海を眺め、誰に言うでもなく告げる。



(銀色の髪が、月光の下で揺れる。)



自分にも分からないこの感情を、あの女は答えることが出来るだろうか。




ばたばたと船内が騒がしくなる。
あいつが目を醒ます前に、
船員共に説明しなければならない。



「キャプテン!ご飯だって!!」

「今行く」


白熊がご飯ご飯と忙しく叫ぶので
俺は甲板に背を向け、渋るペンギンを促し船内に足を運んだ。




夜明けの朝に
(略奪者と海を往く)






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