「困りますね。
シェアに予約も無く手を付けられては」

「あぁ、それは悪いことをしたな」


動じることなく答える彼に荷物のように担がれたまま、
私は呆然としていた。


彼は誰?
私を奪う?


向けられた銃口に、恐怖で体が震えた。



「まさか、あんたがあの、トラファルガー・ローだとはな!」



オーナー達がニヤニヤと笑い彼を見る。
けれどそのトラファルガー・ローという男性が何者なのか、私は知らない。


怖い。
誰かの手が怖い。
人が怖い。

怯えないようになんとか振舞おうにも、体は言うことを利かずに震えてしまっていた。



ふっと体が地面におりた。
どうやら下ろされたらしく、私は崩れそうになる体を手で支えた。
ああそういえば、もう3日程眠っていない。

彼は私を見ることなく
ここに居ろ、とだけ告げてずっと鞘に納めていた刀を抜いた。



「ころす、んですか」

「なんだ、さっきまで殺せって言ってたじゃねェか」

「私が死ぬのとはっまた別の話で」

「うるせェ。もういい黙ってろ」



彼の目は冷たい。
その刀と同じように、冷たい。



「ROOM」



彼がそう呟くと、私の足元付近まで円が広がる。
まるでドームのようなそれの中にあの人達が包まれた。
中で訝しげに、なんだと首を傾げている。
ドームに手を伸ばして見ても、何も感触は無かった。




「触るな」



大きな低い声にびくりと体が跳ねた。



刀身が宙を舞い




目の前で、人が
ばらばらに


ばらばらなっていくのが見えた。





ふと自分の右手に目をやると、
そこにあるべき手首から先の部分が



消えていた。




「ひっ!?」



上擦った声が出る。
しかし水分の取れていない喉はカラカラで、掠れたような声しか出なかった。


不思議と、手首に痛みはない。



「言ったはずだ、触るなと」

「っいた・・・、いたくない・・・」

「腕を出せ」



否応なしに、大きな手が私の腕を掴んだ。
タトゥーの入った手。
その手は、私が彼に抱く印象よりも優しくて冷たい。
こんな優しく触れてくる手を私は知らないせいか、なんとも妙な気持ちになる。


そんな彼によって、私の手が元の位置に戻された。
手をぐーぱーと、何度も閉じては開く。
指先にぴりりとした寒さを感じる。
神経はちゃんとつながっている。



「・・・あなたは、何なんですか?」

「・・・・・・」



彼は私の言葉に顔を一瞬歪め、すぐに元に戻した。



はっとしてあの人達に目を向けた。

確かに、ばらばらになっている。
けど彼らは各々悲鳴のような声を出していて。



「なに、これ・・・」



見たことの無い景色は酷く私を混乱させた。

また体に浮遊感が襲う。
声をあげるよりも早く彼の、トラファルガー・ローの声が聞こえた。


「お前の質問に答えてやる」


「俺は、海賊だ。」



彼の表情を見ることはできなかった。

私は海賊船に連れていかれるのだろうか。
またここと同じように、どこかへ売り飛ばされるのだろうか。

それを最後に私は溜まった疲労感からか
意識を手放してしまった。





おやすみなさい。いっそこのまま
(目覚めたら、すべて夢だったらいい)







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