「私をころしてください。」



「へェ、商品が客に注文か」

「・・・・・・」




銀色の目と髪が光できらめく。
床を蛇のように這う髪が、体を揺らしたときに女の足元に散らばった。

そいつははにかむように笑ってみせる。



「もう、生きたくない」


「このまま、見世物になり続けるのも
誰かのために男の人と夜を過ごすのも
もう苦痛でしかないんです。

もう何度過ごしたか分かりません。
何年ここにいるのかも分かりません。
でももう、もういいんです」



「だから」




ころして。



女が初めて俺の顔を見上げた。
にじんだ涙が、かすかに頬を潤す。
それでも口元は弧を結んでいて、一体なんの使命感にかられているのかと感心してしまうほど。



「まだ泣けるじゃねェか」



こいつはここで何度泣いただろう。
そして何回諦め望み、絶望したのだろう。



女の側に寄る。
腕が、皮しかないほどに細く白い。
その気になれば手錠も足枷も外せるんじゃないのか。



「あの、・・・」

「黙ってろ」



女を繋ぐ鍵を解き、鎖を外す。
鉄が錆びた臭いを放っている。

拘束されるものが無くなった女は、ただ人形のように座ったまま。

立てと言っても、支えが無くなった女は細い足で支えようにも立つことも出来ない。



「お客さ」

「トラファルガー・ロー」

「・・・え?」

「俺の名前だ。
俺はお前の客なんかじゃねェから次からはお客様なんて呼ぶな」



腕を引くとまるで紙かのように女の体が浮く。
小さくひっと声がしたがそれ以上でかい声は出さなかった。



「お前を奪う」

「あのっ!なに、言ってるんですか・・・!?」

「本気だ」



女が腕の中で身じろぐが、びくともしない。

立てない女を抱き抱え部屋の扉を開ける。



チャキン


金具の音が聞こえ、俺が目を向けている先には
オーナーと従業員らしき人間が数名
銃を構えていた。





誘拐宣言
(身代金はいらない)





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