ワールドエンド・ドリーム
異常な気温の上昇、ゲリラ豪雨、地震
今にも壊れそうな地球からなるべく早く戦線離脱するため私は煙草を肺に吸い込んだ。
つまり今すぐに自殺する勇気などないのだ。
空気に溶け込む煙を眺め、そういえば副流煙のほうが身体によくないんだっけなんて考えると急に、部屋に充満する煙をいとおしく感じた。
私の身体にはいまだ何の影響も感じられないけれど、確実にそれは私を蝕んでいるんだろう。
とても素敵だ。
宙を眺めていた私の目に突然光が入り込んだ、ついで音が聞こえる。
考えるまでもなく原因はテレビだとわかったがテレビをつけた覚えはない。
なぜか焦ったキャスターの顔に意識を持っていかれる。
「――今から三時間後に日本は沈みます――」
冗談
何かのテレビ企画だろうと思い、ゆっくり立ち上がり外を見ると道路は人で多い尽くされていた。
怒っている人、泣いている人――そこに見えた誰もが必死だった。
何も出来ず動けなくなっていると、視界がぶれる。
一瞬遅れて足場が傾いたことに気がついた。
家具が倒れる。
叫び声がきこえる。
――逃げないと
私は走り出していた。
どうやって家から出たのかも、あの人ごみを抜けたのかも、あまり覚えていないけれどいつのまにか私は一人で、息を切らし泣きながら走っていた。
もう無理だとわかっていながら、どうしても諦めることが出来なかった。
そこで目が覚めた。
開いた目で見たのは夢の中の部屋と同じ、見慣れた自室だ。
何となく夢をたどるように煙草に火をつけて肺に溜め込む。テレビはついていない。
あぁ、私は生きたかったのか、なんてそんな簡単な答えをやっと見つけることができた。
異常な気温の部屋の中じゃあ私はどう行動しようかと考え、考える間もなく家を飛び出した。
潜り抜けた扉の奥でカチリとテレビのついた音が聞こえた気がした。
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