2 その後数日間、眠れない時が続いた。 昼間は眠気がくるものの講義があるし、それでも昼寝ぐらいいいだろうと目を閉じても結局寝れなかったり。 身体にたまった疲労で注意力は散漫になるし、頭は痛いし気分が悪いので折角作ってくれた蒼士の料理も一回吐いてしまった。 心配そうな眼差しで俺を見る蒼士に申し訳なさで心が苦しい。 さて、そう思っていたら今度は過眠になっていたらしい。 眠気が来て、フラフラしながらもベッドに倒れ込み、そうして次に目を覚ました時は二日後の夜であった。 「・・・あおし」 「どうした?もう、大丈夫か?」 「ごめん、ね?」 俺は蒼士に抱え込まれるように眠っていた。 あの時外着のままであったのにパジャマになっていたから着替えもさせてくれたようだ。 俺が過眠の時、蒼士は俺を抱きしめて寝る。 心配だからと微笑んだ蒼士の顔を、俺は忘れないだろうなぁ。 ただでさえご飯も満足に食べていなかった中、今度は眠っていたので満足な栄養が身体に行き渡っていない。 水を強請り、持ってきてくれたので舌を湿らす。 想像以上に乾いていた喉は、水分を求めていて何杯も飲んでしまう。 「大丈夫か?腹減ってるならお粥でも作るから」 「うん、じゃあお願いします」 台所へ移動する蒼士についていくと、お風呂に入って来いと言われたので浴室へ向かい、汗などで汚れた身体を洗い流す。 ポタポタと身体を纏わる水を眺めて、このまま溶け合うのかなぁと思った。 「お、あがったか。お粥できたから食べろよ」 「わーい、美味しそう!いただきます」 少しでもテンションを高く。 これ以上蒼士を心配させない様にしなければ。 弱った胃はあまり食べ物を受け付けてはくれなかったけど、ほぼ食べきれた。 すぐに横になるのは胃に悪いと思うのでもう少しこのままでいよう。 そう言ったら、蒼士は頷く。 横からじぃっと見つめられているのがわかる。 蒼士はよく、俺の顔を眺めることが多いのではないだろうか。 本人は無意識らしいのであまりわからないらしいけど。 「どーした?」 「・・・やっぱり、怖い」 「うん・・・ごめんね」 肩を引き寄せられ、俺より少しだけ大きい蒼士の胸に顔を埋める。 背中に手を回して存在を確かめて、安心感で胸が満たされる。 蒼士はというと何度も俺の背中を摩り、戯れに髪の毛にキスをする。 このなんとも言えない甘い空間が、苦手だけど、好きだ。 恋人同士のスキンシップのようで恥ずかしい、けど嫌いじゃない。 俺の身体は日々、蒼士の作るご飯で作られる。 そうして不眠の為に身体の調子が悪い時は介抱され、過眠の時は傍に居る。 酸素のように必要な存在でとなった蒼士。 「もうそろそろ寝よう?明日は大学行きたいし」 「そうだな。一緒に寝ても良いだろ?」 「うん、もちろん」 先程まで寝ていたベッドに再び横になり、目を瞑る。 するとすぐに眠気が襲って来て、やはり少しだけ怖くなる。 次に目を覚ますのは何時になるのだろうか。 また蒼士に心配をかけてしまうかもしれない。 「蒼士、」 「どうした?」 「・・・おやすみ」 「おやすみ」 深海に沈んだかのように意識が薄れていく。 また俺の身体は液状になっていき、そのまま遊んでいると今度は風になる。 宙を浮かんで、飛んで、好きなところへいける。 だからこのまま、蒼士のところまで行きたい、そうして今度は触れたい。 溶け合っても、一つになっても満足なんかできやしない。 触れて、そうして、何をやっても結局は満足できないんだろうなぁ。 そのくせ、満たされている不思議。 俺はきっと、一生この感情に名前などつけてやらない。 「おはよう」 「・・・おはよ、蒼士」 今日も、蒼士が居て俺の一日が始まった。 君に繋がる睡夢 (夢と現は、君に会うために繋がる) しおり |