このミステリー研究会が、恐ろしく強烈な人間しかいないとよくわかった。故に、あの強烈なメンバーの洗礼を受けているのを見て見ぬふりしていたゲスコンビは絶対に許さない。呪ってやる。知り合って半日の人間にこんな殺意を覚えたのは初めてだ。

……まあいい、今は目の前のことに集中しよう。


「とりあえずお前ら全員、俺か黛さん、それからそっちのバ…えー…名字の側から離れんなよ」

「はぁ〜い!」

「わかりました」

「うぃーっす」

「りょうかーい!」

「は…はい…」

「おk」


花宮お前、私の名前バカって言いかけただろふざけんな。確信犯だろふざけんな。人が折角集中しようとしてんのにぶっ込んでくんな。


「それじゃあ早速行こっか名前ちゃ〜ん」

「!?」


迸る殺意を諸ともせず、佐良井とかいうやつが私の肩を抱いて進むと言う暴挙に出た。ただでさえ苛立っているのに、こんなチャラ男に絡まれてストレスレベルがマッハだ。
まだ序盤なのに。序盤なのにだ。


「あの佐良井さん彼女嫌がってるみたいなんでやめてあげたほうがいいと思いますよ」

「ん、なになにィ?まりあちゃんもヤキモチ妬いちゃってる感じィ?」

「ちっ、ちがいますよ!」

「おっとぉ〜!まりあちゃん、ヒロを好きになっちゃった感じ〜?」

「や、やめてください!あたしはあなたたちを好きになんてなりませんしなるとしたらま&℃$%¥…ですから…!」

「え?なんて?」


うん、そうだろうね。例え魔界でも一応男女だもんね。恋愛沙汰もあるだろうさ。でもね、頼むから私を挟んで騒ぐのはやめてくれないかな!


「うふふ〜、みんな仲良いねぇ〜。ねぇ真くん?」

「あーはいはいそうだな」

「もぉ〜真くん冷たぁ〜い」

「くるみ殿、花宮さんもいいと思いますがボクの腕も掴んでいただいて結構ですぞ!」

「わ、ケイジくん優しいねぇ〜」

「ぼぼぼっ、僕だって!くるみちゃんの役に立ちたい!…です」

「四郎くんもありがとぉ〜」


ふと、もうひとつの台風の目はどうしているのか見てみると、それはもう全力で花宮に絡んでいた。花宮はというと、それはもう心底鬱陶しそうな顔。これは思わぬラッキーだ。ざまあみさらせ!
でも台風が花宮とこっちに来てるとなると、黛さんはフリーではないか。どこいったあの人。


黛さんを探しつつ、なんとか上手くチャラ男ハリケーンから抜け出した私は、一歩後ろに下がり、大きくため息を付いた。


「ふっ…」

「!」


ため息をついたタイミングで、背後から吹き出すような笑い声。今日何回目の背後からの不意打ちだろう。


「黛さん…!」

「まだ入ってもないのに疲れてるじゃねぇか」

「誰のせいだと!?っていうか、毎回話し掛ける時、背後取らないでもらえますか?!」

「簡単にとられる方が悪いだろ」

「この野郎」


シニカルな笑みを浮かべる黛さんは非常に腹立たしい。まゆゆって呼んでやろうか。
そろそろ胸ぐらでも掴んでやろうかと思ったところで、黛さんは突然人の後頭部を掴んで早歩きで移動し始めたのだ。あまりにも突然すぎて、流石の私も開いた口が塞がらない。


「は!?ま、まゆ…っ」

「俺らがあのアホ共から離れたら意味ねぇだろ」

「わ、おう」

「とっとと歩け」

「うん、わかりましたから後頭部掴むのやめましょう!?私人間!言えばわかる!ドゥーユーアンダースタンド?」

「はいはい」

「本当なんなのこの扱い」


非常に意味がわからないが、あの台風からは逃げるのは出来るとしても、この人と花宮からは逃げられない。私を上回る性格の悪さだからだ。
なのでもう諦めてされるがまま、黛さんに頭を掴まれながら移動するのだった。

この時の問題点とすれば、先程グチャグチャ言ってた物部さんとやらの視線が痛かったことぐらいである。













「さて、どうやって入るか」


少し歩くとすぐに目的の廃校が現れた。広場にいた時から不穏な風があったので嫌な予感はしていたが、まさかここまで面倒臭そうなところとは思わなかった。
なんだこの、明らかに禍々しいオーラを放ちまくった廃校は。



「ほー、初めて見たが結構なもんだな」

「こんなのに入るんですか?クッソ面倒臭そうなんですけど」

「これであのアホ共が懲りるようなことが起こればいいんだけどな」

「黛さんの性格結構悪くて困る」


未だに頭を掴まれたまま、正面入口をボーッと眺めていると、先頭にいた花宮が徐に、目の前に燦然と立ちはだかる柵に近付いた。そして、それはもう綺麗な蹴りを放った。


「いちいち他の道なんざ探してられっかよ」


うん、ハッキリしていて嫌いじゃないよその発想は。
ただ、他の面子はっべーっべーとか、真くんかっこい〜!だとかほざいて、花宮に手を貸す様子はない。っべーじゃねえよ動けよチャラ男。

流石に一人じゃ手間取りそうだったので、私もちょっとした怒りを込めて協力しようと、頭を掴む手を振り払い動き出した。すると黛さんも同時に動きだし、最終的に三人で柵の破壊作業。
この時、チラッとだけ他のやつらを見たところ、怯えた表情を浮かべる男共と、頬を赤く染めた女二人が見えたのだった。だから、動けよ。


(150107)




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