不意討ちのラブコール



世の中は勝ち組と負け組に分かれている。今日はそれが目に見えて分かる日である。そう、クリスマスだ。
辺りにはイチャイチャカップルがこれ見よがしとラブラブっぷりを発揮し、一人の私は物凄くムカついていた。
しかし今日、私は一人イルミをすると決めたのだ。だから、カップル共がいちゃついているなんて知ったことではない。「あの子一人じゃない?かわいそー」とか聞こえてくるけど知ったことではない。笑い声も聞こえてくるけど知ったことではな…い…。


「おかしいなぁ…イルミネーションがやけにボヤけて見えるや…」


悔しくて泣いてるわけじゃない、これは感動の涙なんだ!そう言ってみるけど、一人の私には意味のないことだった。



「hey,名前、こんなとこで…」

「ぎゃあああ!?」

「What!?」



いきなり声かけられてびっくりして、うっかり叫んでしまった。さっき私を見て笑ってたカップルが視界の端で、今度は変なものを見るような目で見ていたのは見逃さなかった。

それは置いといて、私の肩を叩いたのは学校で有名な色男の伊達だった。ちなみに私との関係はただのクラスメイトである。席が前後になって話すようになった程度の。



「で、何故お前がここにいる伊達」

「な、なんだよ…いちゃ悪いのか」

「悪い」

「Why!?」

「何故かって?そんなもん、あんたらみたいなカップルのせいで私が泣…あれ?」



学校1、2を争うイケメンなのだから、彼女連れでイルミネーションでも見に来たのだろうとか思っていた。なのに、周囲をどれだけ見渡しても、彼女らしき人物は見当たらない。



「言っとくが俺はgirl friendなんていねえぜ」

「な、なんだと…っ」

「なんだよその反応」

「だって!伊達って毎日キャピキャピしたバカな女共に囲まれてるから!絶対彼女いると思ってたのに!」

「あいつらに対してそんな認識だったのか」

「で、その子らを!毎日とっかえひっかえしてるのかと思ってたのに!」

「テメエ俺をなんだと思ってんだ」

「イケメン」

「わかってんじゃねえか。って、オイ!」



なんだ、伊達もこっち側の人間だったのか。いやしかし、イケメンが彼女なしでこんなところに一人で来るのもおかしくないか。あれか、そこらのカップルの女を奪うって魂胆か!なんて恐ろしいやつ……



「アンタ、さっきから全部声に出てることに気付いてるか」

「わざと」

「…OK,are you ready for it?」

「ちょっ、ちょっと待って謝るから!ごめんごめん!!」



危うく伊達に殺されるところだった。いやしかし、あの伊達が一人でクリスマスを過ごすとは。しかも一人イルミまでするとは。



「仲間がいると私も心強いよ、うん。気分はまさに戦士」

「勝手に俺をアンタのPartyに加えんな」

「でも私と同じく一人でイルミネーション見に来たじゃん」

「それは……あれだ、聞いたからだ」

「ああ、今年のイルミネーションは今までで一番綺麗だしね」



腕を組んで、イルミネーションの光を静かに見つめた。こうしてじっと見てると、もうカップルの視線も気にならなくなってきた。そうだ、折角なのだから写真でも撮っておこう。
私は組んでいた腕をほどいて、携帯を出そうとした。しかしそれは阻まれた。



「…なにしてんの伊達」

「be wrong」

「は?」



携帯を出そうとポケットに入れようとした手が、何故か伊達に握られていた。そしてやたらいい発音で間違っている発言。さっぱり意味がわからん。携帯で写真を撮るのが間違いなのか。



「俺が聞いたのは、アンタがここにいるってことだ」

「……?」

「だから俺は、アンタを捜しにわざわざこんなとこまで来たんだよ。You see?」

「お…おう…」



私を、探しに、伊達が来た。なんだこの展開。予想外だ。予想外過ぎて、どう反応をすればいいのかわからない。
そんなパニックになってきた私に追い打ちをかけるかのように、伊達は私の手に指を絡めてそのまま手の甲にキス。なんだ、これ。



「俺は、アンタに惚れてるんだよ」

「……は?」

「アンタにそれを伝えるために来たんだ。じゃなきゃ一人でイルミネーションなんか見に来るかよ」



イルミネーションをバックにしたイケメンからの告白。しかも真剣な表情で見つめられてるときた。これが、ときめかない訳がない。
現に、私の頬は熱くなってきて、心臓は嫌というほどどきどきと鳴っている。握られてる手から伝わるんじゃないかってぐらいだ。



「Ha!その反応悪くねえな」

「う、うるせっ…私は別に伊達なんて…す、好きじゃないしっ」

「そんな顔して言われても説得力にかけるぜ」



伊達はまたいつもの悪そうな顔に戻って、手を離した。

結局そのまま、いつも通りのくだらないやり取りをしてうちに帰ったのだった。



――私はあの不特定多数のバカな女共のように、伊達が好きなわけではなかった筈だ。けれど、あの時離れた手を、まだ離したくないと思ったのは確かだ。
年を越して次に会ったとき、平静でいられる自信は最早なかった。


(111225)



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