―コンコン。
宿直室のドアを二回叩くノックの音。
「失礼します。」
「どうぞー。」
お仕事中かと思われた宿直担任兼事務員の人はテレビを横にしてテレビゲームの真っ最中だった。
「…もう!またゲームなんかして……。お仕事は終わったのですか?」
その光景を見て咲夜は呆れるしかなかった。
「大丈夫よ。仕事ならとっくに終わってるわ。」
聞いているのかいないのか、そんな態度で受け流す宿直事務員、蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)。
「…ならいいですけど、これから入学式があるっていうのに…。」
だらける輝夜をとにかく咲夜は心配する。
「なんか最近眠くなって、よく寝ちゃうのよね…。」
「あなたが寝ているのはいつものことじゃないですか。」
「違うのよ。こう…外が暖かいというか……。」
「春夏秋冬関わらず、あなたが宿直室から出てきたのを一度も見たことがないのですが?」
「あー…気のせいじゃない?」
「せめて、入学式くらいは出席してくださいよ。」
「やっぱり春だから眠くなるのよねぇ…」
「話を反らさないでください。」
咲夜は不満げに窓を覗いた。
「そう言われてみれば確かに暖かくて…心が和みますね。」
「あなたも寝ていけばいいのに。」
「…遠慮します。」
宿直室の窓の外には、桜の花びらが舞っていた。
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