※捏造と想像が入り混じっております。










































うちの刀剣には変わった子が1人いる。それは、女の審神者である私よりも女子力が高いであろう彼だ。


「ちょっとちょっと咲子」

「清光、いつも言ってるけど私のことは審神者と…」

「何その格好!信じられない!」


この子は加州清光。私の審神者人生の始まりは彼と共にあると言っても過言ではない(最初の供が彼だからね)。ただずっと一緒にいるせいか、彼は遠慮がない。現に私のことを呼び捨てにするのは彼だけだ。


「しょうがないでしょ。錬結したあと馬小屋の様子見に行ったんだから」

「うわ、よくそんなとこ行けるね」

「うるさい。次の内番馬小屋にするよ」

「やーだよ。馬小屋なんかにしたら、立ち去るからね」

「…なんのことかわかってないくせに」

「なんか言った?」

「なにも」


清光は何だかんだ言いながら私の部屋の前まで着いて来る。1番奥にある私の部屋には近づくなと皆に言ってあるのに。


「いつも言ってるけど…」

「部屋には入るな、でしょ。わかってるよ」

「じゃあなんでついて来たの…」

「これ、なんとかしてあげよーと思って」


そう言いながら清光は私の両手を取った。なんと。私の両手は炭と馬糞にまみれているというのに。どっかのじじいと鯰によって。


「ちょっと…汚ないから離しなよ」

「頑張ってる咲子の手は綺麗だよ。…その服は無理だけど」

「一言多い。…で、この手をどうしてくれんの」

「手…っていうよりは爪かな。だからとりあえず全部綺麗にして来て」


なるほど、爪を整えてくれるのか。確かに清光の爪は綺麗だ。その前に汚ない体には触れたくないから(そこまで言ってないけど)、風呂に入ってこいということらしい。私は部屋に入ってお風呂に入る準備をする。時代が時代だし和風の造りの本丸とはいえ、ちゃんと電気が通ったお風呂に入れる。服を脱ぎ捨て湯船に浸かる。最近は刀剣の数も増えて来て、ゆっくりお風呂に入ることなんてあまりなかった。…まあ今は清光も待ってることだし、急いでお風呂から上がる。文明の利器、ドライヤーを駆使して髪を乾かすが、中々乾かない。ぐしゃぐしゃとタオルで拭きながら乾かしていると、襖がすぱーんと開いた。


「やっぱりそうだと思った」

「な、なに…」


入って来たのはもちろん清光。入るなって言ったのに。清光はずかずかと私の部屋に入るとドライヤーを取り上げた。


「そんなにぐしゃぐしゃにしたら髪が傷む」


清光はそう言いながら私の後ろに座る。なにする気だ、こいつ。


「俺が乾かしてあげる。せっかく綺麗なのに、咲子に任せたら髪が死んじゃう」

「…悪かったわね」


……なんだ、このドキドキ感。綺麗って髪の話だからね。神の髪は綺麗なんだよ。そうそう。清光は指で髪を梳かしながら乾かしてくれる。


「まあ髪乾かしてただけでも良しとするよ。濡れたままうろうろして、風邪でも引かれたら困るからね」

「大丈夫だよ。私頑丈だし」

「…何があるかわかんないんだよ」


清光は小さな声でそう言った。…そっか、清光の元主は…。


「はい!おーわりっ」

「あ、うん。ありがと」

「ほら、爪だして」


清光は私の前に座って手を差し出してくる。私もそれにならって手を差し出す。清光が私の手を取って、爪をやすりで整え始める。


「ちゃんと爪の間まで綺麗したんだね」

「だって汚ないともう1回風呂入ってこいとか言うじゃん」

「あー、そんなこともあったな」


初めて清光に手入れをしてもらった時には爪の切り方が汚ない、間が汚ない、ちゃんと手を洗えってさんざんに言われた。それからは一応、気をつけてはいる。部隊長より汚ない審神者なんてかっこつかないしね。


「よし、じゃ塗るね」

「え?綺麗にしてくれるだけでいいよ」

「だめだめ。俺がこんなに可愛いのに主が可愛くないなんてあり得ないでしょ」


清光はそう言って、私の手を取ったまま爪になにか塗り始める。それは、清光と同じ赤色で。


「赤…って」

「そ、俺と一緒。俺の主だってわかりやすいでしょ」

「…同じにしなくたっていいじゃん。わかるよ、清光の主は誰かなんて」


「俺以外のやつはわかんないでしょ。それに、主はすぐ迷子になるからね。これならわかりやすい」


清光は満足そうに私の爪を眺めている。自分の指先がどんどんこいつと同じ色に染まっていく様子は、なんだかくすぐったくて。


「はい、でーきたっ」

「ありがとう。綺麗だね」

「可愛いって言ってよ」

「可愛いのは清光だからね」

「まあね。それ、絶対落とすなよ」

「はいはい、落とさないよ。…あ」

「まだ乾き切ってないのに触るから!なんでそんなこともわかんないのかなー」

「ご、ごめんって」


綺麗になった爪を見て満足していたら、つい触ってしまったようで。私の指は赤くなってしまった。清光は可愛く出来てたのに、とご機嫌斜めで。…しょうがない。今日は刀装に勤しむとしよう。うちの部隊長をとびっきり可愛くするために。













いつか淋しさを
れたら

(まだ忘れられないからさ)
(俺の主だって…主張したいんだ)































あとがき

3個目は加州くんでした。未だに刀剣男士の呼び方は悩みます。兼定は既に2人もいますし…藤四郎はたくさんいるので。

立ち去り機能については、存在するということしか知りませんが、ネタ感覚で入れてしまいました。


2015年2月3日 羽月



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