「暑い…」
季節は春。桜が舞い散る春。なぜ暑いのか。
「そんな重い着物着てるから暑いんだろ」
「その通りだよ、和泉守兼定」
まあ貴方も相当な厚着だけどね。刀剣達は季節の影響はあまり受けないようで、皆いつもと変わらない服装で元気だ。私は審神者の正式な衣装だかなんだか知らないけど何枚も着物を着せられている。…でも私は思った。監視してる人なんていないし、着る服なんて私の自由でいいよね?
「よし!」
そうと決まれば行くべき場所は1つ!私は重い着物を引きずって目的の場所へと向かった。
「乱ちゃーん!」
藤四郎くんたちが集まるお部屋、つまり一期一振の部屋へと向かう。そこには藤四郎くんたちがわらわらいて、天国のようだった。
「あ、主様!」
一期一振に群がっていた藤四郎くんたちが私の元へ寄って来てくれる。ああ…かわいい…。
「主様っ、僕に何か用事があるの?」
ぴょこぴょこ跳ねる乱ちゃん。そうそう、そうなの。
「うん!あのね、お洋服を1着貸してほしくて…」
「主殿、乱の服を着るのですか?」
一期一振が突っ込んで来る。おお、するどいな。
「うん。背も同じくらいだしいけるかなーって」
「いや、しかし…」
「乱ちゃん!お願い!」
「もちろんだよ!主様、僕の部屋に行こう」
「わーい!ありがとう」
乱ちゃんは私の手を引いて部屋に連れて行ってくれる。これで…私の快適な審神者生活が待ってる!
乱ちゃんのお部屋に着くと、早速着替えを出してくれた。服は、乱ちゃんとお揃いの現代の制服みたいな衣装。
「着てみて、主様!」
「ありがとう!じゃあ自分の部屋で着替えるね」
「どうして?ここで着替えていいんだよ」
「いや…さすがに乱くんの前では…」
「じゃあ僕はいちにいのお部屋に戻ってるね!」
乱くんはそう言って部屋から出て行ってしまった。…よし、とりあえず暑さには耐えられない。自分の重い服を脱ぎ捨てて、乱ちゃんに借りた服を着る。サイズはぴったり。…でも、ちょっと短いような。まあハイソックスはくし…大丈夫か。
私は部屋を飛び出した。まずは乱ちゃんにお礼言わなきゃ。また藤四郎くんたちの集まる部屋に行く。がらがらと襖を開けると、皆がこちらを見た。
「乱ちゃん!洋服ありがとう」
「わー!主様似合うー!」
「主様素敵です!」
藤四郎くんたちはすごく褒めてくれた。乱ちゃんと並んでポーズとか取ってみる。
「ちょっと、一期一振」
「な、なんでしょうか…主殿」
「なんで目そらすの」
「あれーいちにい顔真っ赤ー!」
「ほんとだ!」
言われてみれば顔が赤いような気もする。いつも大人な一期一振が珍しい。
「いちにい照れてるのー?」
「乱の洋服が主様に似合いすぎだからですか?」
「ちょっと…お前たち…」
「一期一振どうしたの?ほんとに」
やっぱり目を合わせてくれない一期一振。うーん、どうしたらいいんだろう。そう思っていると、ガチャリとドアの開く音がする。あ…この音は…。
「ごめん、皆!ちょっと出迎えて来る」
いってらっしゃい、と藤四郎くんたちが見送ってくれる。この音は誰かが帰ってきた音。その誰かは、もちろんわかってる。
「鳴狐!おかえり!」
「…ただいま」
肩に金色のもふもふしたキツネを載せた鳴狐が帰ってきた。今日は短時間の遠征をお願いしていた。…けど。
「ちょっと…どうしたの鳴狐」
鳴狐は無言で私の手を取ると歩き始めた。供のキツネは鳴狐の普段とは違う気配を察知したのか、いってらっしゃいませ!と言って肩から降りてしまった。あれ。
「ねえ…鳴狐…」
そして私の部屋の襖を開くと、部屋に押し込められた。襖が閉じて、少し薄暗い空間に2人きりになる。
「ほんとにどうしたの…わっ…!」
鳴狐に押し倒された…というか無理矢理座らせられる。なんだか様子がおかしい。鳴狐と向かい合うように座っていると、その手が私の足へと伸びてきた。
「ちょっ…なにしてるの…!」
鳴狐は私のニーハイソックスとスカートの間、つまり絶対領域を触り始めた。たしかに鳴狐はスキンシップが多い。だけどこれはさすがに…!
「嫌…?」
少し悲しそうな鳴狐の顔。その顔に勝てないの知ってるくせに…。
「嫌じゃないけど…くすぐったい」
「…そっか」
そう言いつつも、鳴狐はそこを触り続ける。時々、指先がスカートに触れて心もとない気持ちになる。
「いつまで…そうしてるの」
「…綺麗だから」
鳴狐の指が私の足とニーハイソックスの間に入ってきた。まずい、と思った瞬間にはもう遅くて、左足のニーハイソックスを脱がされてしまった。
「鳴狐…いい加減に…っ!」
いい加減にして。そう言いかけたけれど、鳴狐が私の左足を持ち上げるからその言葉も止まってしまった。反射的にスカートを抑える。なんなんだこの子は。
「なにしたいの、鳴狐…」
「…普段は見られないから、たくさん見たい」
鳴狐は少しだけ口角をあげて笑った。その顔に見惚れていると、今度は鳴狐の指が足の裏側を這う。太ももから膝の裏、そしてかかとへ。お姫様が王子様に靴をはかせてもらうような、そんな足の持ち方。
「ねえ、もういいでしょ」
「やだ」
鳴狐はそう言いながら、片手で器用に面頬を外すと…私の足にそっと口付けた。その瞬間に、私の体は尋常じゃないくらい震えて。
「主…?」
「ば…馬鹿鳴狐!」
無理矢理鳴狐の手を引き剥がして、鳴狐から距離を取る。自分が恥ずかしくしょうがない。鳴狐になんでこんなことをされてるのかもよくわからない。体育座りで顔をうずめていると、頭をぽんぽんと撫でられる。恐る恐る顔を上げると鳴狐は少しだけ悲しそうで。
「…ごめん」
「…ん」
鳴狐は素直に謝ってきた。…しょうがないから許そう。そして、鳴狐は先ほど私から脱がせたニーハイソックスを持っていた。
「それ、どうするの」
「主にはかせてあげる」
「は」
「足、出して」
「え、やだやだ。自分ではく」
「いいから」
それから無理矢理足を伸ばされ、ニーハイソックスをはかせてもらうという苦行を強いられた私は、次の日に鳴狐を長時間遠征へと旅立たせた。
桃色の目隠し
(もう洋服なんて着ない)
(乱ちゃんにはなんて言おう…)
あとがき
たまには夢主ちゃんといちゃいちゃするお話が書きたくなってしまいました。色々ごめんなさい。でも鳴狐くんは大好きな人にはスキンシップ激しそうだなーなんて思ってたらこんな話になってしまいました。
一応、刀剣達が刀として生きていた時代には足を出すことは破廉恥だと思われてたと思うので、鳴狐くんもびっくりしちゃったと思うんです。大好きな主の足を誰にも見せたくない!ということでいたずらしちゃったんですね。
読んでいただきありがとうございました。
2015年02月16日 羽月
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