三題噺2
葉桜・屋上・傘
ヒラ ヒラ
ヒラ ヒラ
満開だった桜も、ここ数日降り続いている雨の所為ですべて散ってしまい、すっかり葉桜となってしまった。
その散ってゆく様子を、ひっそりと1人の少女が見つめていた。真っ赤な傘をさして、屋上の上から葉桜となって行く様子を見つめていた。
***
その日は朝から雨が降っていた。私は退屈しながら授業を受けていた。眠気に襲われ、コクンコクンと船を漕いでいると、向かい側の棟の屋上に赤いものが見えた。
目を凝らして見てみると、赤いものの正体は傘。1人の少女が赤い傘を持っていたのだ。
オ イ デ
彼女の表情は見えない。
しかし口元だけがハッキリと見えた。口が"オイデ"と表したのだけはわかった。
私はそれを見た瞬間何も考えることができなくなり、先生に体調不良を訴え、彼女のいる屋上へと駆けだした。
いつもよりも重く感じる扉。
扉を開けると、そこに少女はいなかった。
そこに在るのは少女のさしていた赤い傘と桜の葉。
下を見れば満開の桜。
何故葉桜になっていないにもかかわらず桜の葉があるのかと、首をひねるが答えは出ない。
もしかしたら彼女はそう遠くない未来から来たのかもしれない。
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