死神×人間
死神の仕事は、死期の迫った人間の命を刈り取ること。
普通の人間に俺たちの姿は見えることはない。
2011年6月9日23時18分
土田隼、6月9日23時19分死亡予定。リストと照らし合わせて確認する。俺たちは何も、無差別に死にかけたやつの命を取ったりはしない。ちゃんと管理されていて、リスト通りにしなければいけない。
「時間だ。土田隼、23歳。おまえの魂預かるぞ」
そして、刈り取ると言ってもただ魂を取るのではなく一時的に預かるのだ。刈り取った魂は死神が預かり、浄化させてから再び生まれ落ちるようにする。ターゲットの胸元に手を当て、魂を抜く。抜き取った魂は小瓶に入れて天界まで持って行かなければならない。
「だれ…?」
魂を瓶に入れ、部屋から出ていこうとしたとき、後ろから人間の声が聞こえた。本来、死神の姿は人間には見えない。しかし稀に見える人間が居る。声の主は後者だったようで、しっかりとその目に死神である自分を映し、話しかけてきている。
「兄さんになにしたの」
自分に話しかけてきた人間は初めてで、俺はつい反応が遅れてしまった。
「俺は――」
結局あの後俺は自分が死神であることを話してしまった。そして、仕事で下界に降りる度に土田隼の弟-土田怜と会っていた。それは死神をする上での禁則事項。いつ罰が下ってもおかしくはない状況で、何事もなく数日が過ぎ、俺は油断していた。いつもまじめに仕事をする俺には珍しく、上司から呼び出された。油断していた俺は何故呼び出されたのかがわからず、ただ上司について行く。
「【 】」
普段はあまり使われていない会議室に入れられ、名前を呼ばれる。言葉が重く感じる。そこが暗いことも合わさって尚更だ。
「はい」
「土田怜」
「っ!」
聞き慣れた言葉。死神ではない、人間の名前。僅かな反応も見逃さないというように上司の目が細まる。
「記憶を消せ。痕跡を残すな」
そう言い放って部屋から出ていこうと、足を向かわせる。
「あのっ……どうして……」
わからない。禁則事項を破ったものには罰が下る。これは絶対だ。なのに、目の前にいる上司は怜から記憶を消しさえすれば不問にすると言っている。
「唯でさえ人員が不足しているんだ優秀なものをわざと手放す必要もない」
今度こそ上司は部屋から出て行った。怜から自分の記憶を消す。今まで話したこと、触れ合ったという事実が怜からなくなってしまう。
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