そっと触れた唇が。










『ねー怒ってるの?』

「あ?怒ってねぇよ!」

『なに怒ってるの?』

「だから怒ってねぇっていってんだろ」





朝は普通だったのに何故か機嫌の悪い大輝…理由を聞いても今の通り怒ってないらしい
でも明らかに顔が怒ってるんだけど…
怒らすようなことしてないし…クラスも違うから登校したとき以外かかわってないんだけどなぁ

変な大輝。





『テツくーん…私何かしたのかな…』

「いえ、成宮さんは何もしていません。」





一緒に下校しているテツくんに聞いてみるとなんだか確信めいた答えが帰ってきた。
もしかして何かしってる?







『じゃあなんで機嫌わるいんだろ…』

「成宮さんが今日告白されていたのを見てから機嫌が悪いんです。それが気にくわなかったんだと思います」

『え…みてたの?』

「はい、たまたま通りかかったんです。」

「おいテツ!!いらねぇこと言ってんじゃねーよ!」

『いらないことじゃないよ!』






お昼休みに告白をされた…勿論断ったけどそれを見ていたらしい。
それならそうと言ってくれればいいのに
言う必要もないと思ってたけど見られてるのは意外だった。






『断ったよ?』

「あっそ」

『まだ怒ってる…』

「怒ってんじゃねぇ」

『じゃあなに!!』






ムッスーとしながら二人でいがみあう
なんなの、別に断ったしいいじゃん…
そんなに怒ってるって言われたくないなら笑顔の一つでも見せてみろっ!







「はぁ…ほんと青峰くんは意地っ張りですね」

「なんだと?」

「もう一度聞きたいですか?…はぁ…ほんと青峰くんは…」

「言わねぇでいいよったく…ご丁寧にため息から…ほんとテツとはバスケ以外はあわねぇ」

「ボクもそう思います。ただ、今回のことは青峰くんが悪いです。成宮さんだって理由も分からず怒られるのは嫌だと思います…ちゃんと理由を言ってあげてください…2人のためにも。じゃあボクはこっちなので」

「てめっ言うだけ言って逃げんじゃねぇ!!」

『テツくんありがとー!』






言いたいことを言ってスタスタと去って行くテツくんを見送ってから歩き始める。
さすがテツくん男前!
もうホントに良い人だよね、言わなそうなのに。
隣で不服そうに頭をかく大輝をじっとみつめてみた。






「なんだよ…」

『え…だから…理由ききたい』

「別に。」

『え?』

「ちょっと妬いただけだっつの」

『え、大輝が妬いたの…?』

「お前は自分の彼氏をなんだと思ってんだよ」






驚きしかない。
だって付き合ってからと言うもの好きすらまともに聞いたことないんだから…
告白したのだって私だし、そんな素振り一つも見せないし?
バスケバカだしガングロだし……おっと…ッ。

でも彼女としてはうれしい!




『大輝妬いたの?ねぇ…やきもち妬いたりするの?…ねぇねぇ!』

「あ?」

『だーかーらー!妬くってことは私のこと好ッ』






私の言葉は大輝の“うっせーなぁ”の声と共に近づいてきた唇に遮られた。
なによ、卑怯者!
そう思ってもやっぱり喜んでる自分
受け入れてゆっくりと目を閉じた。


少しして離れた唇…
目をあけ見つめれば口を開いたのは大輝だった






「好きじゃねぇとは言ってねえだろ。」

『好きとも言ってくれたことないくせにっ』

「知るか」



まぁいいや。
好きはまた今度…
今日は嬉しかったから…






そっと触れた唇が。





「おい」

『え?』

「ちゃんと好きだから安心しとけ。」

「ッ!!」


諦めた後に言うなんて卑怯っ!







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