報酬はたんまりと。
「おはよー!希空!」
『あ、みんなおはよー』
「今日も緑間くんと登校ー?」
『え、うん。別にいきたいわけじゃないけどー』
「付き合っちゃえばいいのにー」
『きょーひ!……ん…?』
いつもと変わらない会話を受け流しながら自分の席へと向かう。
はぁ、登校してるからって付き合えばーなんて気軽に言ってくれるよ
私は真太郎と付き合う気なんてさらさらないしあっちだってそう。ただ家が近くで腐れ縁なだけなんだから
勘違いされたら困るよほんと
自分の席に座れば教室の前の方にいる…高尾くん?と目が合う。
よく分からないけどぺこりと頭をさげた
真太郎から名前は聞いたことあるんだけど話す機会がなくて…今だに直接話したことない…なのに良く目が合う…
なんで?
まさか、真太郎がなんか変なことでも吹き込んで心の中で笑ってるとか?
うん、いかにも笑いそうだ。
「よーし、席付けー。始めるぞーあぁ、そうだ今日は席替えの日だったな。じゃあ適当にくじ引きで決めろ」
担任の言葉に教室ががやがやとわめきだした。
くじ引きを教卓の上に置いて順に引いていく…まぁありきたりなアレだ。
私も引いて黒板と照らしあわせると一番後ろの窓側!
ラッキーッ運良すぎ!
さっさと座についてくつろぐと隣から声が…
「あれ、希空ちゃん?…もしかしてそこ?」
『え、そうだけど?』
「まじ?俺すっげー嬉しいわ!話したいとおもってたし」
『真太郎から変なことでも聞いた?』
「え、なにそれー」
どうやら違うらしい…
私が思っていたことが違うとわかればいよいよ理由がわからなくなる…
私は考えた…ずっと、ずーっと!!
授業の間も私の前の席に決まったらしいこの人の背中をみつめ、休み時間も目が合う度会釈をし、話しかけてきたらよく分からないけど取り敢えず頷き。
でもわからない。
そうこうしているうちにやってきたのだ、放課後が。
んー、
前の席に後ろ向きに座って私の机に腕を乗せ、
その上に顎まで乗せ、
さらにこちらをニコニコみつめてくるこいつは
一体全体誰なのか…
「希空ちゃんさー帰んないの?」
『え?あーちょっとやること残ってる。』
「やること?」
『うん…学級日誌。』
「へぇ」
『あのー、帰らないの…?』
「待ってる」
『誰を?』
質問してきた癖にほとんど興味をしめさなかったこいつは…ん、といってこっちを指さしてきた。
待ってる。…ん?おかしい…私はけして君と約束なんてしていない。
寧ろ名前を呼んだことすらない。話したのは間違いなく今日がはじめて。
どう考えてもやっぱりおかしい…
そんなもんもんしている私をよそにこいつと言えば…
「じゃー終わったら起こしてよ」
帰ってやるっ!!!!
手伝うとかじゃないのかそこは…
くそっ私だって眠いのに、その私の机の上で目を閉じて気持ちよさそうに眠るこいつを退けてもいいだろうか…
『はぁ……んー、……だめだ……ねむ…ぃ…』
目の前でスヤスヤ眠ってる人を見てると私の睡魔が暴れだした、もう無理だ。
私も寝る…そう思った時にはすでに意識を手放してよく分からないこの人と同じ机に突っ伏した。
「…ん、…うわっ!希空ちゃん寝てんじゃん…日誌もかけてねーし。仕方ねぇなー」
学級日誌を手に取り彼女の代わりに書く。
書き終わるとそっと彼女の頬に触れてみる、そして額にキスをした…これくらい日誌書いたご褒美で許されるよなー
せっかく近づけたんだし。
真ちゃんから話し聞いてるうちに興味出てきて
みてる内に好きになった…
起きなさそうだしつれて帰っちゃおーかな。
上着を被せて背中におぶった
おきねぇか心配だったけど大丈夫そう。
寝て力入ってないせいで、すげー密着してる…
緊張すんなー、ま、こんなおいしいチャンス逃さねーけど!
「なにをしているのだよ、高尾」
「あ。やべっ!!」
さいてーな奴に見つかっちまった!!
彼女をおぶったまま走って逃げた 。
なに言われるかわかんねーし
『ん…?』
「あ、起こしちまったか?」
『へ?…ぁ…学級日誌…』
「俺が書いといた!」
『え、あ…ごめん…』
「いいっていいって!そのかわり今日はこのまま帰ろうな!」
『え?わあ、ちょっ下ろして』
「無理無理!報酬だからー」
大人しくなった相手を抱えたままニコニコしながら帰る。
そのうち真ちゃんとの距離よりもちかくなってやるからよ
報酬はたんまりと。
「真ちゃん希空ちゃんのこと好きなんだぜ?」
『え、ないない。』
「ホントだって!まぁでも、俺と付き合おーな」
寝てる間に報酬貰ったのは内緒ってことで!