ちびっ子赤司様。













「うわーんッ!!せんせぇーっ」

『なに、どうしたの?とおるくん』

「あかしが〜!」

『また、赤司くん?もう…ほんとに』





男の子が私に泣きついてくる…
毎度毎度、こうして誰かが泣く度に聞こえる赤司と言う名にうんざりとする私
ここはとある小学校2年1組のクラスである…

泣きついてきた男の子をよしよしと慰める私に近付いてくるのは小柄だが真っ赤な髪に色の違う目、幼いながらに整った顔


しかしその目は見開かれ、まるで獲物を見つけた獣のように男の子を見据えている。






『こら、赤司くんダメでしょ?お友達泣かせちゃ』

「ぼくにめいれいしたそいつがわるい。」

「はぁ…まったく君は…」

「おい、はなれろ。」








泣きついてる男の子の服を思い切り引っ張り引き離そうとするのはやっぱりこの子。
ぐいぐいと服が引っ張られるのに離そうとはしない…それが不服なのかこっちを睨んでくる彼に引きつった笑顔を見せる

…あれ、…がんばって笑顔を見せたのに彼の眉間にシワができたのはなぜだろう。

新米教師の私にはわかりません!!





「ぼくのものにさわるな。」










えぇーーッ!!

い、いつから私、君のものになったのかしら…
って言うか小学二年生にもの扱いされてる私はどーしたらいいのでしょうか…


ハッ!ダメだダメだっそれどころじゃないっ
男の子を引き離して今にも襲いかかろうとしている真っ赤な獣をなんとかしなければ!!

小さな小さな背中を見て感じるものが威圧感って…だれかこの重たい教室をどうにかしてー…






『赤司くん…?』

「…ぼくにさからうヤツはゆるさない」

『うん、わかったわかった…じゃあ取り敢えず、他の場所で先生とお話しよっか…ね?』

「ぼくにさからったコイツをなでてわらったヤツもおなじだ」







ピシッとこちらを指差して言う彼。
でも目はさっきのような目じゃなくちょっと拗ねたようなもので、可愛いと思ってしまった私はいけないでしょうか…

キョトンとしていた私に次は両手を上げてきた…




『なになになになにッ!!』





もしや、心の声が漏れて何かされるのではと思い少し後ずさる。
それにあわせて彼も近付いてくる…







「ほかのところではなすって…」

『うん、言ったよ?』

「…つれてけ」






ん、と上げてきた手は抱っこ要請だったようで
なんだ、可愛いところもあるではないかとニコニコしながら抱きかかえてやる

やっぱりまだまだ子供、甘えたいお年頃なのだ。
抱えると、思った以上にだらんと抱きついてきて肩に顎をのせてくる…
たまらずよしよしと背中を撫でて教室をでた…











「ぼくにさからったら、先生でも殺す。」





おっとぉぉぉぉォッ!!
まさかの殺人予告ですよこれっ!

さっきの胸きゅん乙女心返せやごらぁッ



耳元で囁かれた言葉にニコニコなんてものは勿論吹き飛んで、
苦笑いと共に廊下を歩いた…










そして‥‥ー









帝光中学校入学式。
六年生の担任を受け持った私来賓席に座っていた。






「新入生代表、赤司征十郎。」






そう、彼は今年から中学生になります…
勉強、スポーツ共にトップクラス。
立派に成長してくれたためこうして代表の挨拶までするようになっちゃって…


まぁ人間成長するもので……。









「オレに逆らうヤツは親でも殺す。」




立派に成長しましたとも、今にも人を殺めそうなほどにね……。
身長はまだ小さいのにな‥‥ー








ちびっ子赤司様。





やっぱり君は君のままだわ…。






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