おもむろにギターが机の下に置かれた。俺が本から顔を上げるとみょうじがジュースの残りを黙々と読んでいた。
今日は無難にりんごジュースにしてみた。100%じゃないことに文句を言われたが、これはこれで気に入っているらしい。

「ぬるい」

生気の抜けた顔でみょうじがぽそっと言った。俺は本を閉じながら苦笑する。
もう大分暑くなってきたせいか、みょうじは作曲の手を止めて俺に話しかけてくることが多くなった。この放送室にはショボい扇風機の一つもない。集中が途切れるのも当然だ。

「そういや、何でいつもここで作曲してんでィ。家のが涼しいだろ」

「弟が受験生だから」

ストローをくわえたままみょうじが放った言葉に俺は目をむいた。

「弟いたのか」

「うん。中3」

うわーマジでか。絶対一人っ子だと思ってた。
そんな俺の心の声が聞こえたのかみょうじがじとっとした視線を向けてくる。

「…何でィ」

「沖田は、お姉さんいるでしょ」

「え」

俺の顔に答えは出ていたらしい。みょうじが得意げに笑った。
何で分かったのか聞けば姉の勘というお答えが返ってきた。
ああそうですか。子どもっぽくて悪かったなちくしょー。

「でも、弟いるかもとか思った」

「…残念ながら末っ子でさァ」

「うん。沖田みたいのが下に二人もいたら大変そう」

悪びれず言うみょうじに言い返す気力もなく、俺はジュースを手に取った。
ああ、ぬるい。


余計な世話だ
それは君にも言えることです
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -