※学パロ


何だ、何なんだ。私が何をしたって言うんだ。
八つ当たりに、空っぽになった財布を地面に投げつけた。くそったれ。悪態と一緒に涙が落ちる。
何で私がこんなに辛い思いをしなきゃならないんだ。転校生ってのは無条件で目をつけられなきゃいけないのか。そんなに身内がいいなら近親相姦でもやってろ馬鹿野郎。

俯いたまま泣くのが悔しくて、ぐっと顔を上げた。
ああ、空が青いな畜生。
いくら地球が回っても私の口が悪いのは治らないし、蹴られてボロボロになった体は痛いままだ。
嫌に眩しい太陽が歪んだとき、私の傍に影がさした。

「何してんだ、おめェ?」

私は空を仰いだまま視線だけでそちらを見る。
黒い髪、左頬の傷、だらしなく肩から下がった赤いスポーツバッグ、そして謎に麦わら帽子。見覚えのある男だった。隣のクラスのルフィとか言う奴だ。
そいつは地面に座っている私の目線に合わせて近くにしゃがみ込むと、じっと私の顔を見つめた。
肘までまくられたワイシャツの袖から、小麦色の肌が惜しみなくさらけ出されている。

「……カツアゲされた」

「そっか、大変だな!」

そう言って男はにししっと笑う。この状況を見て笑うのか。
そんなことよりも、私はその笑顔の嫌味の無さに驚いていた。
何なんだコイツ。

「お前、この間転校して来た奴だろ! どんな奴か気になってたんだ」

いい奴だな! とルフィは笑う。すっげー弱いけどな! とも言われた。余計なお世話だ。
ルフィがおもむろに立ち上がった。そのまま転がっていた私の財布を拾う。

「お前は弱いけど、弱虫じゃねえよ」

いつの間にか瞳は乾いていた。目の前の男の陽気がうつったのかもしれない。
その言葉はやけに真っ直ぐだった。ルフィの口からするすると流れてくる。『考えた』ことではなく『思った』ことを言っているのだろうな、とぼんやり思った。

「弱虫だったら、こんなにボロボロになるまで闘わねェよ」

手渡された財布は温かかった。
ああ、もう嫌だ。眩しくて見ていられない。
私は今度こそ、声を上げて泣いた。


あなたが綺麗だから泣くのです
うろたえる君にそう言ったら、何だそりゃと笑われた

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