「でね、銀さんったら」

「へー、ふーん、そーなんだ」

私はなんとか頭を覚醒させようと、残り僅かとなったミルクティーをすすった。空になっていくグラスの中には、氷もほとんど残っていない。
ああ、一時間前の自分がうらめしい。何を血迷ってさっちゃん相手に恋バナを切り出したのか。
ちょっといいことあったから浮かれてたんだな、うん。

「ねえちょっと、聞いてるの!?」

「うん聞いてる聞いてる」

適当に頷いてみせれば、さっちゃんは満足したようにまたノロケ(と言う名の銀さんと観察報告)を語りだす。だからそれはストーカーだよ、って何回言えばわかってもらえるんだろう……。
悪い子ではないんだけど、無駄に打たれ強いのが難点だ(つまりM)。まあ彼女のこの性格は気分屋の私が振り回し続けた結果ではあるんだけど。
あ、ミルクティーなくなった。

「すいませーん、ミルクティーひとつー」

「…あんた、そろそろ飽きてきたんでしょ」

「うん」

さすが幼馴染み。『ミルクティー切れ=集中力切れ』という私の定義をわかっていらっしゃる。
こういう気は遣えるくせに恋愛面に上手く応用できないんだよねえ。

「さっちゃんてさ、銀さんさえいれば生きていけそうだよね」

「当たり前でしょ! 愛に勝るものはないのよ!」

へーそうですか。君がそんなに恋愛主義者だったのを知ったのは最近のことなんだがね。
自分で振った話題にも関わらず、私の意識は既に運ばれてくるミルクティーに向いていた。そんな私の様子に呆れたようにさっちゃんが言う。

「で、あなたはどうなの?」

「……………私?」

一口ミルクティーを含めば程好い甘さが一気に脳を駆け巡る。
やっと話に戻った私はぽけーっとさっちゃんを見た。眼鏡の奥の瞳は恋する乙女の色だ。


酸素、ミルクティー
それだけあれば生きていける気がする

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