ネイト | ナノ
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樹海の糸


***

おまけ設定の『ネイトの初恋(?)は事件を担当してくれた中年男性の刑事さん。何かあったらいつでも連絡を、とプライベートナンバーの載った名刺をもらってずっと大事にしていたけれど、数年後に一度だけかけたら奥さんが出たので「間違えました」と電話を切ってそれきり名刺も捨ててしまった』を見て、ヘタレグダグダネイトがどうしても書きたくなった、という話。

***





『―――』


受話器から聞こえてきたのは女性の声だった。
「―――」
一言告げ、ネイトは受話器を置いた。
間違えました、と告げた言葉は間違いで、間違ってはない。
ネイトがかけた相手とは別の相手が出た。
だから、切った。
だが……―――とネイトは自嘲の笑みをこぼした。
手の中にある一枚の名刺。
そこに書いてあったプライベートナンバー。
『なにかあったらいつでもかけてきなさい』
そう言い名刺を渡したのはあの事件を担当した刑事だった。
親切な"大人"だった。
自分の話をきちんと聞き、子供だとあなどることなく理解しようとしてくれた人。
"なにか"あったわけじゃない。
電話なんてかけるつもりなど最初からなく。
受け取った名刺を肌身離さず持っていたのは―――理由などない。
自分とそして弟のこれからのことを親身に考えてくれた人だった。
だが"すがる"つもりだったわけじゃない。
電話などするつもりなどなかった。
なのに―――
『hello』
たった一言、聞こえた声が耳に焼きついて離れない。
それがあの人ではなく、女性だったというそれだけだ。
雰囲気からいってきっとあの人の夫人なんだろう。
歳を考えれば、結婚していることは容易に想像できる。
そもそもあの人が結婚していようがしてまいが自分には関係ない―――のだ。
プライベートナンバーに電話してしまったことに、意味はない。
なにも。
くしゃり、とネイトの手の中で名刺がつぶれる。
電話をするつもりなどないのなら、最初からこれは必要がないものだったのだ。
ただあの人が―――優しかったから。
だから。
「……」
ゴミ箱の上で手を止める。
そして手の中のモノを捨てる。
そうするまでにしばらくの時間を要したのいも―――意味などない。
『いつでも電話しておいで』
名刺を渡されたときに、頭を撫でられ、向けられた柔らかな眼差しをいまでも覚えている。
ふ、とネイトの顔に笑みが浮かんだ。
それは"いつも"浮かべてる笑み。
胸の内に、いくつかの想いが浮かびあがろうとして、寸でで消え、底に沈む。
頭の中に、いくつかの想いを選んで、
『そういえば、いい刑事さんだったな。元気だろうか』
と、そう思って電話しただけだ、と考えた。
女性が出て、切ってしまったのには意味はない。
―――かけたこともたいして意味はない。
なにもない。
「リュートになにかお菓子買って帰ろうかな」
そうして大切な唯一の存在を思い出す。
大切な、守って、そばにいたい、大切な、弟。
自分は弟さえ幸せになりさえすればいいのだ、と、何を買っていこうかとネイトは思考を巡らせたのだった。




おわり。



オチ? なにソレ美味しいの?
自己満でほんとすいません(涙)
タイトルに意味はありません・・・。ネイトにぴったりだなーと思ったこっこの曲。