03
やってきた食堂!
夢に見ていた食堂のメニューはわりとリーズナブルな良心的値段だった。
「ここね、安いけど美味しいんだよ」
と、忍ちんがオススメのランチを教えてくれる。
「……ふうん」
金持ち学校らしいけどまぁ高校生だし、んなランチに高額設定なわけないか。
メニューを眺めながら俺はとりあえず基本である、
「オムライス!」
を注文した。
忍ちんがちらちら俺の顔を見てくるけど今はそれどころじゃない。
オムライスをトレイに乗せてテーブルにつく。
まわりは楽しそうに喋りあっている生徒たち。
情報通りに顔がいい生徒が多い。
あーあれツンデレ系だな。あれはクール系ドSと見た!
で、あれはあれはー。
ニヤニヤしそうになるのを必死で押さえてオムライスを食べながら回りを観察した。
いまは食事時だから生徒たちは多い。
ということは、だ。
生徒会のメンバーもそろそろ来るはずだろう!!!
ざっと見たところメンバーはいなさそうだし、それにこの食堂には―――王道でよく見かける二階の生徒会や風紀しか立ち入れないといったVIP席というかそもそも二階がなかった。
「あ……あのさ忍ち……、く、くん」
「へ?」
うおー!やべぇ、危うく忍ちんって言いそうになった。
ミートドリアをはふはふ小動物のように食べていた忍ちんは一瞬きょとんとして俺を見る。
「……ご、ごめん……忍くん……なんて慣れ慣れしかったかな」
「そんなことないよ! 好きに呼んでくれていいよ」
「……ありがとう。あ、あのオ……僕のことも名前で呼んでいいから」
俺がおどおどとそう言えば忍ちんは愛らしく顔を輝かせた。
「本当? じゃあ嘉信くんって呼ぶね」
はにかむ忍ちん……萌え!!!
んー忍ちん親衛隊とか入ってないのかな。
副会長つき親衛隊の副長とかで健気に副会長のことを想っていたり……。
ああ、そういや"生徒会"は"アレ"だけど、親衛隊はないっつってたなぁ。
まぁでもあの生徒会なら親衛隊はなくてもファンクラブくらいあるはずだ。
藤林学園のデータを思い出しながら考えを巡らせてると、
「それで? なにか訊きたいことある?」
忍ちんがスプーン片手に首を傾げてきた。
「……あ? あ、ああ。あの……生徒会のひとたちっていつごろくるの?」
残念なことに俺の出迎えは生徒会副会長ではなくただの用務員のオッサンで。
だから残念なことに生徒会副会長の王子様だけどもエセスマイルを見透かして指摘したことにより気に入られキスされるなんていう王道展開はなかった―――が。
まだ可能性はある!
生徒会メンバーが食堂にきて、そして!きっとこの中で浮いている異質な俺に気づくはずだ!
そこで俺は!!!
「生徒会? ……えっと、ああ……もうみなさん来てるよ?」
王道展開を頭の中で繰り広げていたら、忍ちんの返事がした。
思考停止すること数秒。
「え?! ど、どこ!?」
正体隠し人目を忍んだ大人しい王道転校生のキャラを忘れ、思わず叫んでしまった。
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