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【涼、自室にて】



私立藤林学園。
中等部と高等部からなる全寮制の男子校。
広大な敷地を持つ藤林学園は一言で言えば金持ち学校だ。
両家の子息たちが入れられ学業、スポーツ、そして礼儀作法を教育される。
だが高等部からの外部生も多くとっている。
特等生の割合も多く、外部生は偏差値をあげるための頭がいいやつらが入ることができる。


「びーえる、ねぇ」


嘉信の姉・揚羽さんに連絡を取ったその日のうちに早々と資料が届けられた。
メモリカードに入れられたデータを自室のパソコンでチェックしていく。
藤林の生徒は金持ちとそして金はなくとも頭脳があればOK。
王道ではないし、わりと校風は自由と謳っている―――が。


「ま、若いんだし性欲くらいあるよなぁ」


"王道学園"でないにしろ全寮制という中ではどうしても男同士で、というのが起こったとしてもしょうがない。
暴行というたぐいのものは幸いなかったが資料には、いわゆるハッテン場―――性行為の相手を求める場所があることを記していた。


「……んー、とくに問題はないだろ」


嘉信の目的はいま"王道生徒会"を作ることになっている。
あいつはやるといったらやるだろうが、王道生徒会を作ったからといって生BLが見れるかと言えば別問題だ。
それにさすがに親衛隊なんかは作ろうとしたってそうそう簡単には作れないだろうしな。

藤林の生徒会は毎年夏休み前から明けて10日までに自薦他薦で役員を募る。
そして9月末に学園祭があり、その直後に選挙がおこなわれるようになっていた。
立候補した生徒たちの多くが学園祭で選挙活動を兼ねて自己アピールをするのだ。

生徒会の構成は会長、副会長、書記、会計。そして書記と会計に一年生の補佐が一名づつ入る。
俺と嘉信は新学期から転入するわけだし、役員募集期間には問題なく間に合う。
ただ問題は―――10日までに俺たちが選んだ生徒を立候補するように説得できるか、だよな。
そのあたりもよく考えなきゃいけないが、まずは人選。

王道生徒会なんだから第一に美形。
そしてキャラクター。
あとは学力―――。

二年生生徒の中から絞り込んでいき、必要な者だけプリントアウトしていく。
あとで嘉信のパソコンにもメールしておかなきゃいけない。
その最中に王道生徒会候補ではないけど一人、可愛らしい顔立ちをした生徒をディスプレイに表示させた。

"朝中忍"

嘉信のルームメイト―――で、腐男子らしい。
中等部からの持ちあがり組。
実家は高級旅館。歳の離れた兄と姉が一人づつ―――の末っ子。
純粋そうだというのが写真からでも見て取れた。
成績も悪くない、顔も女の子のようで可愛い。


「王道でいうところの巻き込まれ脇役ってところかな?」


新学期からは俺ともクラスメイトになる。


―――よろしく、忍ちん。

ディスプレイに向かって呟いて、そしてまた情報整理に戻った。



***


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