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嘉信くんは本当にすごい!
なんだかよくわかんないけど、すごい人だった。

腐男子だということを暴露しあった僕たちはとりあえずコーラでカンパイして、お菓子を食べながらBLのことを熱く語った。
そして話は嘉信くん自身のことになって、王道転校生としてここにくるまでのことを聞いていたんだけど本当すごすぎる!


「ほ、本当に総長だったの!?」

よく王道転校生は元総長だとか族潰しだったりするけど、リアルで美形なだけじゃなくって総長もしてたなんて!!
正直、暴走族って言われて"今時!?"とか、怖いのかなって不安になったけどニコニコBLの話をしてる嘉信くんを警戒なんてできなかった。
腐男子に悪いひとはいないよね!


「だったっていうか、一応明後日までは総長かな」
「明後日?」
「明後日一旦戻って正式に総長を引退する予定なんだ。早くこっちに来たくてケジメつけてなかったからさ」
「そうなんだ」

明後日は土曜日で、来週火曜日からは夏休みも終わって学校が始まる。
嘉信くんは本当は10月から転入予定だったんだけど、どうしても王道生徒会に早く会いたくって1カ月繰り上げてきたんだって。


「……王道生徒会、残念だったね」

腐女子であるお姉さんに影響を受け腐男子になった嘉信くんは、この学園の二年前の王道生徒会の写真を見せられてて勘違いしてたらしい。
だからさっき食堂で様子がおかしかったんだ。
今の生徒会はみんないい人たちだけど、王道生徒会とは似ても似つかない。
現実的に見れば当たり前なんだけど、二年前には王道っぽい生徒会がいたんだから悔しい気持ちは僕も十分わかる。


「……ほんともう愕然どころじゃなかったよ! 食堂イベントむちゃくちゃ楽しみにしてたのに!!」
「僕も見て見たかったなあ」

リアルに目の前で繰り広げられる王道生徒会と王道転校生のやりとり。


「……嘉信くん。ごめんね」


ふと僕は気づいて食べていたポテチを置いて頭を下げた。
嘉信くんは驚いたように目を見開いてる。


「急にどうしたんだよ、忍ちん!?」
「……ううん。せっかく王道転校生なのに、僕みたいな地味なのがルームメイトで悪いなぁって思って。だって王道転校生のルームメイトは一匹狼な不良くんでしょ?」


残念ながら僕には不良のかけらもない。
巻き込まれ系平凡もあるけど、僕の場合平凡すぎて……。
つくづく理想と現実って違うんだなぁってため息が出てきた。



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