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ちなみに潤は"王道不良"の女嫌い設定。
そのために本当は下半身ゆるゆるの潤はこの1年ちかくかなり自制させられてもう限界寸前だ。
圭人は圭人で、
「……かわいいなぁ、ハルちゃん」
「……」
エロゲオタクなので、龍王風から抜けたあとはひたすらゲームをするらしい。
いや、勉強もしろ。
「んじゃ、今回は俺だけだな」
「「……」」
最後に確認するように訊けば見事にスルーされた。
飲み込んだため息がまた出て、ケータイを取りだす。
そして電話をかけた。
「―――もしもし、俺です。どうも」
聞こえてくるのは若い女性の声、だ。
「はい、さっき嘉信から電話ありました。……やってくれましたね、揚羽さん」
"王道"不良だの、学園だのにハマって一々行動に移す馬鹿嘉信。
それも元をたどればすべて―――嘉信の実姉にあり。
「3日後、藤林に入ります。それまでに藤林学園高等部生徒の全資料用意お願いします」
―――まぁきっともう用意されているんだろうけど。
「はい。今回は俺だけ行きます」
あっさり俺の言葉に頷く揚羽さんに、幸せがどんどん逃げていくのを感じながらもため息まじりに告げた。
「一応念のため、"王道転校生"の格好なんてしていきませんからね。それと俺フラグ立ちませんから。俺、ノーマルですから」
もちろん、嘉信も、だ。
なにをあの馬鹿は自らBLしに行ったんだか。
いくつか揚羽さんと転入にあたっての準備について話し、電話を切った。
さて、と明るく染めた髪を弄る。
もうちょっと髪色暗くして悪目立ちをしないようにしよう。
まぁ藤林学園は嘉信の期待していた"王道学園"ではなかったけど。
そんなことは普通に考えれば当たり前だ。
とりあえず龍王風を立ち上げたときよりは"王道生徒会"結成のほうがいくらかマシだろうな。
あー……男子校か。
潤と違って女遊びが激しいとかはまったくないけど(設定としては"王道女ったらしフェロモン男"だったけど)、いまでも十分男ばかりの集まりで次もまた男ばかり。
いい加減彼女とか欲しいんですけどね。
なんて思っていた俺が―――まさかあんなことになるとは、このときの俺が知る由もない。
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