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【チーム・龍王風にて】


ケータイ切ってポケットにしまうと、何度目かのため息が出る。
ちらり視線を向ければ潤は次の漫画に手を伸ばしていて、圭人はPCのディスプレイをじっと見つめていた。

「……あのさー」
「ヤダ」
「嫌だ」
「……まだなにも言ってないでしょ」

もう一度深くため息をついて髪をかきあげる。

「なにもって、ヨシくんのでっかい声ダダ漏れだよ。俺はぜぇったい、行かない!!」
「俺も絶対行かないぞ。龍王風のカタがついたら家にこもる」
「……」

またまたため息がでそうになるがなんとか飲み込む。

「で? 涼ちゃんは行くの?」

まったく俺の方を見ずに潤が言ってきて、

「……殿様を放っておいたらなにしでかすかわかんねーからなぁ」

と渋々呟いた。
殿様っていうのは嘉信のこと。
潤、圭人、俺、そして嘉信と龍王風にはいないもう一人海斗は幼馴染だった。
家族ぐるみで昔から仲が良い。
この龍王風をつくることになって俺や潤たちが幹部なのもその絡みだ。

「で、三日で来いって?」

そこでようやく潤が顔を上げた。

「ああ。そのかわり明後日嘉信にこっちに来るように言った」
「あったり前だよ。向こうに行く前にちゃんと片付けてって欲しかったのにさ。なーにが『みんな……ごめん』だよ!」

あの日、下っ端メンバーに向かって嘉信が告げた言葉。
ただその言葉には続きがある。
俺たち幹部にだけ、向けた言葉が。
それを思い出したのか潤はイライラしたように漫画をソファーに叩きつけて叫んだ。

「なああにが、『王道転校生をみんなが待ってるんだ!!!』だよ! あんの馬鹿ッ! もともと来月末で引退予定だったのにさ! 次の幹部連中発表してすんなり抜けれたのに!!」
「……」

潤の言うとおり9月末で俺たちはチームを抜けるつもりだった。が嘉信が、
『もう無理! 俺を王道学園が呼んでいるんだ!!』
なんつって一足先に行ってしまった。

下っ端にはまさか総長が『王道転校生になるため転校していきました』なんて言える筈がない。
というか王道転校生なんて言ったところでなんのことかわからないだろうなぁ。
BLなんて縁ないだろうしなぁ。
……いや、俺も縁ないけどね。

「つか全寮制の男子校なんてまじありえねぇし! しかも王道でラブフラグとかほんっとアイツ馬鹿じゃねーの!? 誰がいくかっつーの! あんの馬鹿ヨシ昨日も夜中に何度もメールしてきやがって、しかも王道ルックの写メとかいらねーっつーの!」
「……」
「だぁれがBL堪能しに行くかボケ! 俺はようやくもう少しで"王道・わんこ系女嫌い美少年"キャラから解放されんだよ!!! 
ナナちゃんとかカナちゃんとかイズミちゃんとかミミちゃんとかとヤリまくるっつーの!!!!! ハーレムだっつーの! 男子校なんか行くか、ボケ!!!」




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