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ど、どうしよう。
いきなり腐男子暴露しちゃった。

「……王道……転校生」

ぼそりと目を見開いたまま嘉信くんが呟く。
ああ……そっか、そうだよね。
腐男子もなにも意味わかんないよね。王道とか言われても。
でもきっと変な奴だって思われたことは確実だよね。
初日なのに……きっとドン引きされ―――……。

「し、し、忍ちん!!!」

いきなり嘉信くんが僕の手を握りしめてきた。
呆然としてたはずの表情はどうしてかキラキラ輝いてる。
な、なんだろう。
今度は僕が呆然としていると、

「忍ちんまさかの腐男子!?」

嘉信くんが叫んだ。

「……え」
「この俺の王道スタイルを理解してくれるやつが学園にいたなんて! っしゃぁ!! しかもチワワ系の忍ちんが腐男子だなんて!!!」
「……え……まさ、か」

一言で言えば驚愕。
え、まさかまさか。

「も、も、もしかして……嘉信くんって……腐男子…?」

恐る恐る訊くと嘉信くんはぐっと親指立ててもしこれが王道学園だったらいろんなところから『抱いてー』とか『きゃー嘉信さまぁ!』とか聞こえてきそうな笑顔を浮かべてる。

もちろん僕は腐男子だけどノンケだし、単純に美形だなぁって思いはするけど、見惚れるとかそんなことはなく、今度は僕がぎゅっと嘉信くんの手を握り返した。

「じゃ、じゃあ、もしかしてその格好って、本当に!?」
「ああ、忍ちんが言ったとおり"王道転校生"仕様だ!」

自信満々に言った嘉信くんに、

「うっわー! すっごいいい!!!」

と僕の興奮はピーク。

「忍ちん、そんな褒めないでよ」

照れたように嘉信くんは頭をかきながら、「このカツラの下見たい?」とボサボサの黒髪をつまむ。

「う、うん!」

やっぱりカツラだったんだ!
大きく頷くと嘉信くんは嬉しそうに笑って一気にカツラを取った。

「……」
「どう、忍ちん?」
「……っ!! すっごい、嘉信くん完璧だよー!!!」

カツラの下はパーフェクトな金髪。

「そ? これで親衛隊の制裁もなくなるかなぁ?」
「なくなるなくなるよー!!」

王道展開でいけば食堂で目をつけられた王道転校生は生徒会のみなさまに気にいられたゆえに親衛隊の制裁対象になる。
でも先の方では美形だってことがばれて、王道転校生も親衛隊持ちにまでなっちゃうんだよね!

嘉信くんのナイスジョークにどんどんテンションは上がっていって、僕たちはかなりテンション高めの状態でそれからしばらく好きな王道展開について冗談を交えながら話していた。



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