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08


嘉信くんがそんなことを叫んでいるなんてことを知らず―――僕は相変わらず食堂でミートドリアを食べていた。


猫舌だし、普段から食べるのが遅いからしょうがないよね。
ふうふうとスプーンにのせたドリアを必死で冷ましながら食べてると、


「ここ、いーい?」

よく聞きなれた声がして斜め前の席にトレイが置かれる。
小さいお椀に入ったのはお粥と梅干……。


「ゴローちゃん。また胃の調子悪いの?」

座ったのは去年僕のルームメイトでクラスメイトの田中吾朗ちゃん。
吾朗ちゃんはとっても綺麗な顔をしてて、優しそうな儚げ美人。
王道学園だったら抱きたいランキング上位に入ってること間違いなしってくらいに綺麗なんだ。
王道学園だったら絶対親衛隊持ちで生徒会にも入ってると思う。
あ、でもゴローちゃんは生徒会副会長とかでもいいけど、一見穏やかな美人さんで実は裏では誰も見たことがない風紀委員長とかいう設定でもいいと思うんだ。
とにかく綺麗で、なんだけどやっぱり現実に"王道"なんて―――……。


「うん。もう昨日夜にピザ食べたらあたっちゃって、お腹痛いし胃もたれしまくってるし、キリキリ痛いし……。薬飲んだけどなかなか効かないんだよね」

顔を青白くしたゴローちゃんは涙目でお粥をレンゲでつつきながら哀しそうにため息をつく。
……ゴローちゃんは、胃腸が弱い。
儚げそうな色白美人さんだから持病があって……とかならなんとなくしっくりくるんだけど胃腸以外は健康そのもの。
ゴローちゃんのポケットにはいつも胃腸薬が入れてある。
まぁ胃腸が弱いのも立派な病弱なんだろうけど。
ちょっと残念な気がするなんて思っちゃう僕はひどい子なのかなあ。
はふはふ、ふうふう、とお互いアツアツの料理を冷ましながら食べていく。


「そういえば、このオムライスって誰の?」

食べ残されたオムライスをゴローちゃんが指さす。


「ああ……それね、今日からルームメイトになった子のなんだ」
「へぇ。そういや言ってたね。転入生がルームメイトになるって」
「うん! もうその子すごかったんだよ! あのね、王道転校生だったんだあ」

嬉しくって顔が緩んじゃう。


「王道転校生って……なんだっけ」
「ほらーぼさぼさ頭に瓶底眼鏡の」
「あー」


ゴローちゃんは腐男子ではない。けど、去年僕とルームメイトで僕が腐男子だってことは知ってる。
腐男子なんてなかなかカミングアウトできることじゃないし、それを知ってるゴローちゃんにはいろんなBLの話をしちゃってたんだ。
もちろんゴローちゃんはノーマルだしきっと僕の話は楽しくないだろうから申し訳ないんだけど。


「ぼさぼさって、カツラなのかな?」
「そうだと思う! だってね、違和感ありまくりだったもん!」
「そうなんだ。でも残念だね、忍くん」
「なにが?」
「だってここ"王道学園"ではないでしょ?」


腐男子になったのは中学の頃からなんだけど王道にハマったのはゴローちゃんとルームメイトだった高一のとき。
もういろんなBLを読みまくって、萌えと興奮から王道への愛をゴローちゃんには何度も語ってた。
……本当にごめんね、ゴローちゃん。


「うん。そうなんだよねー。でもいいんだ。王道転校生が見れただけでも」

リアルBLは見たことないんだけど、実際は男同士で付き合ってる生徒もいるんだって。
だけど小説みたいにみんながみんなゲイだったりバイだったりじゃないし、週末になれば外泊届出して彼女に会いにいくーっていう子たちも多いんだ。

麓の町には田舎だけど女子高があって、みんなそこの女の子と遊んだりしてるって話は聞いてる。
僕は……あんまり恋愛にはまだ疎くって今は王道だったり非王道だったり、ほかは愛有鬼畜×平凡とか、年下わんこ攻め×教師とか、痴漢×高校生でほだされちゃってつきあっちゃったり……とかいろいろあるBLを読んでるほうが楽しいんだ。

もちろんいつか僕も可愛い彼女ができたらなぁ……なんて思うけど。



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