Sweet Birthday 12


「はい、あーん」
「……」

一戦終えて、とりあえず下履いたけど上は裸のままで俺は優斗さんに背を預けていた。
後から抱き締められるようにして座ってて、そんで『あーん』だよ。
素直に食べさせてもらったけどケーキって優斗さんのためのものだしなあって視線を後に向けると「なに?」って微笑まれる。
ついさっきまで確かにあった滾ったものは欠片も見当たらない穏やかな眼差し。
でも俺の身体には赤い痕がいくつか残ってるし、素肌は密着してるし―――なんか気恥ずかしくなってしまう。
って、俺は乙女かよ、マジでバカじゃねーの。
ちょっとうろたえた自分を消すように、

「優斗さんのケーキなんだから優斗さんがいっぱい食べなきゃ」

ってフォークを取ってケーキにさした。
一口大に切り取って優斗さんに食べさせてあげる。
俺を抱きしめる手が緩まないからちょっと食べさせにくいけど。

「ありがとう」

嬉しそうに目を細める優斗さんに、やっぱなんか気恥ずかしいし居心地悪い。
だってなんかさ、すっげぇ甘い雰囲気だし、なんかなんかまるで恋人同――……ってアホか!
ふとよぎった考えに優斗さんはまだ実優ちゃんが好きなんだろうしナイナイって慌ててケーキを口に運ぶ。
と、途端に「俺が食べさせてあげるのに」って耳元で残念そうに囁かれた。

「っ」

ビクッてバカみたいに震えたのを誤魔化すように優斗さんにも急いでケーキを食べさせてあげる。
優斗さんは笑いながらフォークを取ると俺に食べさせてくれて、俺が次は食べさせてあげて。
その繰り返しですぐにケーキはなくなった。

「捺くん」

一戦する前に淹れていたコーヒーはとっくに冷たくなってて、それを飲んでいたら優斗さんが俺の顔を覗き込んできた。

「なに?」
「誕生日のわがまま言っていい?」
「……ん? いいよ。優斗さんの誕生日だし」
「本当? なら……一緒にお風呂入らない?」
「……」

だめ?、と訊かれて一瞬間を置いて首を振った。

「そんなのわがままでもなんでもないよー。俺でよければお風呂くらい!」

なーんてへらへらと言ったけど、少し声上擦った。
実際初めて一緒に風呂入るってわけでもないし、男同士だし。
別に風呂ぐらい平気なんだけど―――。

「じゃあお湯溜めてくるね」

そう言って頬っぺたにキスして優斗さんはバスルームへと向かっていった。
残された俺は頬っぺたを無意識に掻きながら―――落ちつかない息子の位置をごそごそと動かしたり。
風呂入るだけで緊張とかマジでバカじゃねぇの!
いままで散々女の子とも入ってきただろー!
って心の中で自分を叱咤してコーヒー一気飲みしてたらすぐ優斗さんが戻ってきて。
そしてそんな時間かかることなくお湯が溜まったことを知らせる音楽とともに一緒に入ることになった。


そして―――

「捺くんの誕生日お祝いさせてね」
「……っ、ん……、う、んっ」

茹であがりそうなくらいにつかったお湯の中で、優斗さんに抱き締められて貫かれながら、俺は頷いたのだった。



【おわり】

prev 

TOP][しおりを挟む]

<