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だけど容易くその動きは封じられる。

「千裕」

声と、俺の腰を掴む手。

「三度目はないよ」

目が合い、くすりと笑う智紀さんに頭が真っ白になる。
三度目―――。
一度目はジャグジーで逃げて、二度目さっきこの手から逃れようとした。
さんざん快楽におぼれて土壇場で逃げようとする俺を笑ったまま智紀さんは見据えて後孔に触れてきた。
冷たくぬるりとした液体と指が窄まりにほんの少しはいってくる。

「ッ……!」

身体が強張る。
本当に爪の先が少しくらいうまっただけなのに圧迫感と違和感が激しく、押しだそうと力が入るのを感じた。

「ちーくん、力抜いて」
「……ぅあ」

言われたとおりにしようとする。
けど、できない。
固く閉じて、侵入を許さない、許すことができないように力を込めてしまう。

「しょうがないなぁ」

苦笑する智紀さんが後孔から指を離した。
無意識に安堵に弛緩する身体。
だけどすぐに俺の身体は反転させられ腰を持ち上げられた。

「智紀さん……っ、あ」

背中にのしかかる重み。と、同時に腕がまわされ、委縮し萎えた俺のモノが握られる。
強めに扱かれて硬さを取り戻していく。
背中へと唇が落とされ背筋に這う舌にまた熱がくすぶりだす。
さっき吐精したばかりなのに巧みに強弱をつけながら扱いてくる指に荒い息と先走りがこぼれてしまっていた。

「……ッん、は……ン、ンッ!!」

前を弄られながら背中に舌が這ったまま、不意に後孔に指が触れてきた。
びくり、とした瞬間、俺のモノを握る手に力が込められ微かな痛みに眉を寄せ、そして次の瞬間後孔に指先が挿入された。
逃げる間もなく、そっとだけどぐっと指先がうまる。

「智紀さ、んっ……無理です……っ」

気持ち悪い、痛い。
頭を埋め尽くすのは拒絶だけで、三度目はないと言われたのに逃げようとしてしまう。
だけど今度は止められることなく肉壁をほぐすようにしながらゆっくりゆっくりと指は後孔を侵していく。
その間も俺のモノは扱かれ続けていて鈍痛と違和感のはざまで快感を呼び起こす。
ぐちゅりと鳴る水音は前からなのか後からのものなのか。

「……っ、智紀さん……っ」

不安と恐怖に肩越しに振り返る。
俺の背中に顔をうめてるから見えなかったけど、すぐに顔をあげて笑いかけてきた。

「なに?」
「っ、俺……、もう」

無理です。
なんていうのは情けないだろう。
そうわかっていても初めて経験する後孔への侵入は嫌悪感しかわかない。
首を力なく横に振る俺に智紀さんが顔を近づけてきた。
唇が重なり、苦しい態勢で舌がはいりこんで引っ張るように絡みついてくる。
後孔に入った一本の指は途中で動きを止め、それ以外はひたすら快感をおくるように動いている。
舌を吸われ食むように噛みつかれ息もままならない。
苦しい、のに、気持ちよさはあるから逃げられない。

「……は……っ…ぁ」
「千裕。痛いのは最初だけ。たくさん気持ちよくしてあげるからいまは我慢するんだよ」
「っ……ぁ……ぁ」

最後までシようね、とあやすような声はやっぱり多分に笑いを含んでいて俺の意志は汲んでもらえない。

「大丈夫。俺を信じて」

と、続いた声は―――少し優しかった。
そして埋まったまま動きを止めていた指が前と連動するように静かに抜き差しを始めた。
変わらない違和と圧迫感。
前を扱かれてるから多少軽減されるが、それでもやっぱり後を弄られていることのほうへ意識がいってしまう。

智紀さんの指が出ては入ってを繰り返し、内壁をたどっていること。
決してスムーズではない抜き差しにその指の形さえはっきりわかってしまう。
痛い、というよりはあり得ないという拒絶。
力が抜けることはなかったけど―――

「……は……っ、ぁ…?!」
「どうかした?」

一瞬覚えたのはこれまでとは違う、違和感。
智紀さんが問いかけてくるけど、その指は今までと同じように動きながらも一点を擦りあげてきていた。



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